障害者雇用を始めたいと思っていても、「何から手をつければよいのかわからない」「どのように業務を切り出せばよい?」「採用した後もしっかりサポートできるだろうか」と、不安を感じている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、障害者雇用を初めて進める企業にもわかりやすいよう、準備から採用、入社後の定着支援までの流れを順を追って解説します。障害者雇用促進法や法定雇用率などの基本知識をはじめ、採用方針の決め方や求人・面接、合理的配慮で押さえておきたいポイント、ハローワークや就労支援機関などの活用方法も紹介します。
障害者雇用を始める前に知っておきたい基本
障害者雇用をスムーズに進めるためには、採用活動を始める前に制度や企業に求められる対応について理解しておくことが大切です。
まずは、障害者雇用促進法や法定雇用率など、企業が押さえておきたい基本から確認していきましょう。
初めて障害者雇用に取り組む企業が押さえておきたい制度や準備、注意点については、障害者雇用を初めて行う企業向け|押さえるべき制度と準備・注意点についてでも詳しく解説しています。
障害者雇用促進法と企業の義務とは
障害者雇用促進法は、障害のある方が職業を通じて自立し、その能力を十分に発揮できる社会を目指すための法律です。この法律により、企業には障害のある方へ雇用機会を提供することや、安心して働ける環境を整える取り組みが求められています。
具体的に企業が押さえておくべき主な義務は、以下の4点です。
- 障害を理由とする不当な差別をしないこと
- 本人の希望や障害特性に応じて合理的配慮を提供すること
- 法定雇用率以上の障害者を雇用すること
- 一定規模以上の企業が障害者雇用状況を報告すること
ここでポイントとなる「合理的配慮」とは、障害のある方が職場で働く際のバリア(支障)を取り除くために、企業が適切に対応することを指します。
例えば、業務手順を視覚的にわかりやすく示したり、勤務時間を調整したり、通院しやすい休暇制度を用意するといった対応が挙げられます。
ただし、どのような配慮が必要かは、障害の種類や程度、担当する業務によってさまざまです。
法定雇用率と障害者雇用納付金制度とは
「法定雇用率」とは、企業が雇用すべき障害者の割合を法律で定めたものです。民間企業の法定雇用率は、2026年7月1日から「2.7%」に引き上げられました。これに伴い、従業員(常用雇用労働者)が37.5人以上の企業には、原則として1人以上の障害者を雇用する法的な義務が発生します。
このように法定雇用率は段階的に見直されており、雇用義務の対象となる企業の範囲も広がっています。自社の従業員数の変動によって必要な雇用人数や対象の有無が変わるため、常に最新の制度状況をチェックし、適切に対応していきましょう。
算定方法にも特徴があり、週の所定労働時間や障害の程度によってカウント方法が異なります。例えば、週20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合は、原則として「0.5人」としてカウントするなど、雇用形態に応じた計算ルールが設けられています。
また、あわせて知っておきたいのが「障害者雇用納付金制度」です。これは、法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、逆に目標を超えて雇用している企業に対して調整金や報奨金を支給する仕組みです。従業員が100人を超える企業で雇用率を下回っている場合、納付金の支払いが必要になることがあります。
ただし、納付金を納めれば雇用義務が免除されるわけではありません。この制度はあくまで企業間の経済的な負担を調整するためのものであり、雇用の代わりになるものではない点に注意しましょう。
障害者雇用の対象となる人
障害者雇用の対象となるのは、身体障害、知的障害、精神障害などのある方です。実際の採用活動(障害者雇用枠)では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの提示によって障害の状況を確認するのが一般的です。
それぞれの区分には、以下のような方が含まれます。
- 身体障害:視覚障害、聴覚障害、肢体障がいのある方、内部障害など
- 知的障害:自治体等から療育手帳が交付されている方や、判定機関で知的障害と判定された方
- 精神障害:統合失調症、気分障害、てんかんなどの精神疾患がある方(発達障害のある方も、精神障害者保健福祉手帳の対象となる場合があります)
ここで覚えておきたいのは、「障害者手帳を持っている方だけが働く対象ではない」ということです。一般枠で活躍されている方や、あえて手帳を取得していない方もいらっしゃいます。採用にあたっては手帳の有無だけで判断せず、本人の希望や能力、必要とされる配慮を丁寧に見極めて進めていく姿勢が大切です。
なお、法定雇用率の算定対象に含まれるかどうかは、障害の種類や程度、手帳の有無、週の労働時間などによって細かく規定されています。自社でのカウント方法や具体的な実人数について確認したい場合は、最寄りのハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)などの専門機関へ相談してみるのがおすすめです。
障害者雇用の進め方を6つのステップにわけて解説!
障害者雇用を円滑に進めるには、採用活動だけでなく、業務設計や受け入れ体制、入社後の定着支援まで計画することが大切です。次の6つのステップに沿って準備しましょう。
ステップ1|障害者雇用の目的と採用方針を決める
まずは「なぜ自社で障害者雇用に取り組むのか」という目的を社内で共有しましょう。法律の遵守はもちろんですが、人手不足の解消や多様な人材が活躍できる職場環境づくりなど、自社にとってのポジティブな意義を明確にすることがスタートラインです。
目的が固まったら、採用人数、雇用形態、勤務時間、配属先の候補、必要なサポート体制といった基本方針を決めていきます。
経営層や人事担当者だけでなく、実際に受け入れる予定の現場責任者も巻き込んで、初期段階からしっかりと認識を合わせておくことが成功の鍵となります。
ステップ2|担当してもらう業務を整理・切り出す
続いて、配属先で任せる業務の洗い出しを行います。既存の職種を一括で任せるだけでなく、日々の作業工程を小さく分解(切り出し)してみると、本人の適性や得意なことにマッチする仕事が見つかりやすくなります。
作業の具体的な内容や手順、求められるスキル、必要な設備などを整理し、どこまでの範囲を担当してもらうかを明確に設定しましょう。
このとき、視覚的にわかりやすいマニュアルやチェックリストを準備しておくと、入社後の教育や業務の引き継ぎがぐっとスムーズになります。
どのような業務を任せればよいか迷っている場合は、障害者雇用における業務の切り出し方も参考にしてみてください。業務を整理する際の考え方をより詳しく確認できます。
ステップ3|採用条件を決めて求人募集を行う
整理した業務内容をもとに、雇用形態、契約期間、給与、勤務日数や時間、勤務地などの採用条件を確定します。求人票を作成する際は、必要な経験だけでなく、オフィスのバリアフリー状況や勤務時間の変更に応じられるかといった職場環境の情報も具体的に記載しましょう。
応募者が「自分自身が実際に働いている姿」をイメージできるよう、1日のスケジュール例や職場での役割を丁寧に伝える工夫が効果的です。募集を開始した後は、応募者の反応や集まり具合を見ながら、必要に応じて求人内容や選考ステップを柔軟に見直していきましょう。
ステップ4|面接・選考で適性や必要な配慮を確認する
選考の場では、これまでのスキルや経験に加えて、切り出した業務との相性や希望する働き方を確認します。障害の種類や等級だけで合否を判断するのではなく、「どのようなサポートがあれば能力を発揮できるか」「本人には何が得意か」という点に視点を当てることが大切です。
面接では質問の意図が伝わるようにわかりやすい言葉を選び、必要に応じて面接時間や回答方法を工夫します。また、入社後のギャップやミスマッチを防ぐためにも、実際の仕事内容や勤務条件、職場の雰囲気については包み隠さず具体的にお伝えしましょう。
★おすすめ!職場見学や職場実習の導入
採用プロセスに「職場見学」や「職場実習」を取り入れるのも大変おすすめです。応募者は実際の職場環境や仕事のテンポを体感できますし、企業側も作業への適性やコミュニケーションの取り方を直接確認できます。
実習を行う際は、実施期間や担当業務、事故・体調不良時の連絡体制などを事前に取り決めておきましょう。終了後は本人と受け入れ部署の双方からヒアリングを行い、最終的な採用条件や支援内容の調整に活かしていきます。
ステップ5|受け入れ体制を整えて雇用を開始する
採用が決定したら、配属先の上司や同僚に向けて、担当する業務や接し方、配慮すべき事項についてあらかじめ共有しておきます。ただし、本人の同意を得ずに障害に関するプライベートな情報を共有しすぎるのはNGです。どこまでの情報を周囲に共有するかは、必ず事前に本人と相談して決めましょう。
あわせて、専任の教育担当者や社内相談窓口を設定し、業務ルールや社内マニュアルを丁寧におさらいします。出退勤の時間や休憩の取り方、指示の出し方なども本人とすり合わせを行い、安心感を持って初日を迎えられる環境を整えます。
採用前に整えておきたい社内体制や現場でのサポートについては、障害者雇用の受け入れ体制について解説した記事もあわせてご覧ください。
ステップ6|入社後、定期的なフォローで職場への定着を支援する
無事に入社した後は、定期的な面談(1か月ごと、3か月ごとなど)を通じて、業務の進み具合や体調の変化、日頃困っていることがないかをこまめにヒアリングします。同時に、現場の上司や同僚からの意見も聞き取り、必要であれば業務量ややり方をタイムリーに調整しましょう。
何かトラブルが起きてから対処するのではなく、普段からオープンに相談できる信頼関係を作っておくことが大切です。本人の慣れや成長のスピードに合わせてサポートの仕方を少しずつ変化させ、誰もが長く安心して働き続けられる職場環境を目指していきましょう。
障害者雇用の採用準備で確認してほしいポイントとは?
障害者雇用の採用準備では、求人を出すだけでなく、法律や面接時の注意点など、事前に確認しておきたいポイントがあります。
採用後のトラブルを防ぎ、安心して働ける環境を整えるためにも、企業として押さえておきたいポイントを確認していきましょう。
面接での「確認してよい内容」と「配慮すべき質問」を知っておく
選考時の面接では、障害名や手帳の等級だけで機械的に判断するのではなく、「自社で安全かつスムーズに業務を行えるか」という視点で必要な情報を確認することが大切です。
具体的には、担当予定の業務に対する適性、勤務時間の希望、通院の頻度やタイミング、職場で必要となる配慮、体調に変化があった際の相談方法など、採用後の働き方に直接関係する項目を中心にヒアリングしましょう。
一方で、業務に直接関係のない病歴や家族のプライベートな状況、障害に関する過度な質問は避けなければなりません。具体的には「障がいはいつからあるのか、原因は何なのか」などは避けましょう。質問をする際は「なぜその質問をするのか」という目的をあらかじめ説明し、わかりやすい言葉遣いを心がけてください。
本人が回答を控えたい様子を見せた場合に、無理に聞き出そうとしない姿勢も重要です。採用担当者や面接官には、職業安定法に基づく「公正な採用選考」の基本的な考え方をあらかじめ共有しておきましょう。
障害者雇用の面接で確認したいことや質問する際の注意点については、障害者雇用の面接について詳しく解説した記事も参考にしてください。
合理的配慮の提供は必要!対応が難しいケースも確認する
障害者雇用において企業には、募集・採用の段階から入社後に至るまで、障害特性に応じた「合理的配慮」を提供する義務があります。配慮の具体的な内容は、本人としっかり対話を行いながら、業務上のバリア(支障)を取り除く方法を一緒に考えていきます。
<具体的な配慮例>
- 口頭だけでなく、業務指示を文書やチャットで残す
- 作業手順を工程ごとに細分化・視覚化する
- 体調に合わせて休憩時間や出退勤時間を調整する
- 定期通院日に配慮したシフトや休暇制度を整える
- 社内に専任の相談担当者を配置する
ただし、本人の希望する配慮がすべてそのまま受け入れられるとは限りません。企業の事業規模や経済的状況から見て「過重な負担」となる場合は、そのまま実施するのが難しいためです。そのような場合でも断って終わりにするのではなく、費用面や実施可能性を踏まえた「代替案」を提示し、双方で納得がいくまで話し合いを重ねることが大切です。
あらかじめ社内で、オフィスの設備対応(バリアフリー化など)の可否、勤務時間調整の限界値、業務変更ができる範囲、非常時の避難体制などを確認しておくと、採用後の行き違いを未然に防ぐことができます。
現場への研修と情報共有で、社内のサポート体制を整える
障害者雇用を成功させるには、人事や採用担当者だけでなく、実際に配属される現場の上司や同僚の理解と協力が不可欠です。配属前には、本人から同意を得た範囲で「業務上必要な配慮事項」や「適切な接し方」「緊急時の連絡先」を正しく現場へ共有しましょう。このとき、本人のプライバシーを守るため、障害名や個人的な背景を必要以上に伝えすぎないよう注意が必要です。
現場向けの事前研修では、障害に関する基礎知識に加えて、具体的な指示の出し方やトラブルが起きた際の相談フローをわかりやすく伝えます。現場の管理職やOJT担当者を明確な相談窓口として指定し、定期的に業務進捗や困りごとをキャッチアップできる仕組みを作りましょう。
また、支援機関(地域障害者職業センターやハローワークなど)と連携する場合は、本人の同意を得たうえで、どこまでの情報を共有するかや具体的な連絡方法をあらかじめ決めておきます。専門機関との役割分担を明確にしておくことで、現場だけに負担が集中するのを防ぎ、持続可能なサポート体制を築くことができます。
また、障害者雇用を始める前に社内でどのような研修を行えばよいかについては、障害者雇用における社内研修について解説した記事で詳しく紹介しています。
採用先を見つけよう!障害者雇用で活用できる募集方法
障害者雇用の採用活動では、一般的な求人媒体だけでなく、就労支援機関や学校など、障害のある人の就職を支援する機関と連携することが重要です。複数の方法を組み合わせ、自社の仕事内容や求める人材に合った採用経路を選びましょう。
ハローワークや就労支援機関を活用する
ハローワークには、障害者専用の相談窓口が設けられており、求人の出し方や採用活動について相談できます。求人票の作成、応募者の紹介、面接日程の調整などを支援してもらえる場合もあります。
就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などの障害福祉サービス事業所に相談する方法もあります。利用者の得意な業務や働き方の希望を把握しているため、仕事内容と応募者の適性を踏まえた紹介が期待できます。
求人を出す際は、業務内容、勤務時間、勤務地、給与、必要なスキルに加え、通院や休憩、勤務日数などに関する相談の可否も具体的に記載しましょう。
特別支援学校や障害者就業・生活支援センターと連携する
特別支援学校では、在学中の生徒を対象に職場見学や職場実習、就職に向けた支援を行っています。卒業後の採用を見据えて実習を受け入れることで、企業と本人の双方が仕事内容や職場環境を確認できます。
障害者就業・生活支援センターは、就職を希望する障害のある人に対し、就業面と生活面の支援を行う機関です。採用前の相談だけでなく、就職後の職場定着に向けた支援について相談できる場合があります。
連携を始める際は、担当者に会社概要、募集職種、具体的な業務、勤務条件、職場見学や実習の受け入れ可否を伝えましょう。
障がい者雇用支援「ファーマーズマーケット」を活用する
障害者雇用を進めたいものの、「自社で業務を切り出せない」「自社だけで面倒を見切るのは厳しい」とお悩みの企業には、障害者雇用支援「ファーマーズマーケット」の活用がおすすめです。
ファーマーズマーケットなら、16年の豊富な実績をもとに、農場実習から採用、入社後の定着までを一括で手厚くサポートしてくれます。自社で無理に業務を作ったり、現場で手探りのサポートを抱え込んだりする必要がないため、自社にノウハウがない企業でも安心です。
初期費用・設備投資0円で始められる上、定着率95%という高い実績も魅力です。自社での負担を抑えながらスムーズに雇用を進めたい企業にとって、非常に心強い選択肢となります。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
障害者向け求人サイトを活用する
障害者向け求人サイトでは、障害のある人を対象とした求人を掲載できます。勤務地や職種、雇用形態、勤務時間などの条件から検索されるため、自社の求人を必要としている人に情報を届けやすい方法です。
求人情報には、担当業務を抽象的に書くのではなく、1日の業務例や使用する設備、必要なコミュニケーション方法を具体的に記載しましょう。未経験者の応募可否、研修の有無、通院や勤務時間に関する相談の可否も明示すると、応募者が働く姿をイメージしやすくなります。
掲載後は応募状況を確認し、応募が少ない場合は仕事内容や応募条件の表現を見直します。ハローワークや支援機関への求人情報の共有も行い、複数の採用経路から応募者を集めるとよいでしょう。
まとめ
障害者雇用は、法定雇用率を満たすことだけを目的にせず、自社の業務や職場環境に合う採用方針を決めることから始めます。業務の切り出し、求人・選考、合理的配慮、受け入れ体制、入社後の定期的なフォローまでを計画することが、職場定着につながります。ハローワークや就労支援機関などとも連携し、本人の希望や特性を確認しながら、無理なく継続して働ける環境を整えましょう。



