「障害者雇用促進法について調べてみたものの、内容が難しくてよくわからない」「自社では具体的に何をすればいいの?」と戸惑っている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、対象となる企業や障害者をはじめ、法定雇用率や差別の禁止、合理的配慮など、企業が押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
障害者雇用状況報告や納付金、助成金、ハローワークなどの支援についても紹介するので、「まず何を確認すればいい?」という方はぜひ参考にしてください。
障害者雇用促進法とは?目的や対象をわかりやすく解説
障害者雇用促進法は、障害のある方が能力や適性を活かして働き、職業生活を安定させることを目的とした法律です。正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」といいます。
法律では、障害者の雇用機会を広げるための「障害者雇用率制度」のほか、募集・採用や雇用における障害を理由とした差別の禁止、合理的配慮の提供などについて定められています。
大切なのは、障害のある方を一律に特別扱いすることではありません。一人ひとりの特性や状況に合わせて必要な配慮を行い、それぞれが能力を発揮しながら働ける環境をつくることが、この法律の基本的な考え方です。
障害者雇用促進法の目的とは?
障害者雇用促進法は、すべての企業に関係する法律です。特に、一定数以上の常用雇用労働者を雇用する民間企業には、法定雇用率に基づいて障害者を雇用する義務があります。
企業規模にかかわらず、募集・採用時の差別禁止や合理的配慮の提供など、事業主に求められるルールがあります。
民間企業の法定雇用率は2026年7月1日から2.7%となっており、常用雇用労働者37.5人以上の企業が対象です。対象となる企業は、自社で何人の障害者を雇用する必要があるのかを確認しておきましょう。
国や地方公共団体などには民間企業とは異なる法定雇用率が設定されているほか、業種によっては雇用率算定時の対象労働者数を調整する「除外率制度」が適用されます。障害者雇用の除外率の仕組みや対象業種、計算方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
障害者雇用促進法の対象となる障害者
障害者雇用促進法では、身体障害や知的障害、精神障害などがあり、長期にわたって職業生活に相当の制限を受ける、または職業生活を営むことが著しく難しい方を「障害者」としています。
ただし、「障害者雇用促進法の対象になる人」と「法定雇用率の算定対象になる人」は、必ずしも同じではありません。法定雇用率を計算するときは、障害の種類や程度、障害者手帳の有無、週の所定労働時間などによって取り扱いが変わります。
そのため、障害者を採用したからといって、必ず1人をそのまま「1人」として算定できるわけではありません。法定雇用率への算入を考える場合は、対象者の条件や算定方法を事前に確認しておくことが大切です。
常用雇用労働者数や障害者数の具体的なカウント方法については、障害者雇用率の計算方法をわかりやすく解説した記事も参考にしてください。
できないとどうなる?障害者雇用促進法で企業に求められること
障害者雇用促進法では、企業に対して障害者の雇用機会を確保し、障害の有無にかかわらず働ける職場環境を整えることを求めています。法令上の義務を怠った場合、行政指導や勧告などの対象となることがあります。
法定雇用率以上の障害者を雇用する
一定規模以上の企業には、法定雇用率以上の障害者を雇用する義務があります。2026年7月1日から民間企業の法定雇用率は2.7%となり、常用雇用労働者37.5人以上の企業が対象です。
法定雇用率を下回ったからといって、すぐに罰金が科されるわけではありません。ただし、障害者の雇用状況によっては、雇入れ計画の作成を命じられたり、計画の実施について勧告を受けたりする場合があります。改善が見られなければ、企業名が公表される可能性もあります。
また、障害者雇用納付金制度の対象となる企業では、法定雇用率を下回ると不足人数に応じた納付金が必要になる場合があります。納付金を支払えば雇用義務がなくなるわけではないため、計画的に採用や職場環境の整備を進めることが大切です。
企業グループで障害者雇用を進める場合には、「特例子会社制度」などを活用できるケースもあります。一定の要件を満たして認定を受けることで、グループ内の障害者雇用を一定の範囲で合算して算定できます。障害者雇用の特例認定の仕組みや認定条件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
募集・採用や待遇での障害者差別は禁止
企業は、障害があることだけを理由に応募を断ったり、募集条件を不当に制限したりすることはできません。採用後も、賃金や配置、教育訓練、昇進、福利厚生などで不当な差別的取扱いをしないことが求められます。
たとえば、「障害がある方は一律で応募できない」とするなど、障害の有無だけで判断するのは適切ではありません。募集や採用では、その仕事に必要な能力や適性をもとに判断することが基本です。
差別禁止に違反した場合は、行政による助言や指導、勧告の対象となることがあります。求人を出す前に、募集条件や選考基準に問題がないか確認しておきましょう。
必要な合理的配慮を提供する義務
企業には、障害のある方が働くうえで感じる困りごとを減らせるよう、必要な合理的配慮を行う義務があります。ただし、必要な対応は一人ひとり異なるため、「障害の種類が同じだから同じ対応」と決めつけるのではなく、本人と話し合いながら考えることが大切です。
たとえば、口頭だけではなく文書や図を使って業務を説明する、勤務時間を調整する、車いすで移動しやすい環境を整えるなどが挙げられます。
一方で、本人から希望されたことをすべて受け入れなければならないわけではありません。企業にとって「過重な負担」となる場合は、希望どおりの対応が難しいことを説明したうえで、ほかにできる方法がないか本人と話し合います。「対応できない」で終わらせず、実現できる配慮を一緒に探す姿勢が重要です。
障害者が安心して働ける相談・支援体制を整える
障害者雇用は、採用すれば終わりではありません。入社後に困ったことや体調の変化があったとき、気軽に相談できる環境を整えておくことも大切です。
特に、障害者を5人以上雇用する事業所では、一定の要件を満たす「障害者職業生活相談員」を選任し、職業生活に関する相談や指導を行う必要があります。また、一定規模以上の企業には、障害者雇用推進者を選任する努力義務があります。
社内では担当者だけに対応を任せず、人事や上司などが連携できる体制をつくっておきましょう。自社だけでは対応が難しい場合は、ハローワークや地域障害者職業センターなど、外部の支援機関に相談することもできます。
障害のある方が長く安心して働くためには、採用時だけではなく、入社後も状況を確認しながら必要なサポートを続けていくことが重要です。
障害者雇用の負担を減らしたい企業におすすめしたい「ファーマーズマーケット」
「障害者雇用を進めたいけれど、社内に任せられる仕事がない」「採用後のフォローまで自社で対応できるか不安」と感じている企業も多いのではないでしょうか。
そんな企業におすすめなのが、農業を活用した障害者雇用を支援する「ファーマーズマーケット」です。16年のノウハウをもとに、農場見学から約2週間の実習、面接、採用後の定着まで一貫してサポートしています。採用前に実際の仕事を経験できるため、入社後のミスマッチも防ぎやすいです。
さらに、初期費用・設備投資0円で始められるため「障害者雇用のノウハウがない」「現場の負担をできるだけ増やしたくない」という企業にとって、専門スタッフの力を借りながら障害者雇用を進められる心強い選択肢となります。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
企業が行うべき障害者雇用の手続きとは?
障害者雇用に関する主な手続きは、「障害者雇用状況報告書の提出」と「障害者雇用納付金の申告・納付」です。対象となる企業や提出時期が異なるため、それぞれの内容を確認して対応しましょう。
障害者雇用状況報告書を提出する
一定規模以上の企業は、毎年6月1日時点で障害者の雇用状況を確認し、「障害者雇用状況報告書」をハローワークへ提出する必要があります。
報告書には、常用雇用労働者数や雇用している障害者数などを記載します。障害者の人数は、障害の程度や週の所定労働時間などによって算定方法が異なるため、事前に確認しておきましょう。
提出期限は原則として毎年7月15日です。電子申請も利用できるため、対象となる企業は従業員数や障害者数など、必要な情報をあらかじめ整理しておくとスムーズです。
なお、報告義務があるにもかかわらず提出しなかった場合や、虚偽の報告をした場合には罰則の対象となる可能性があります。毎年必要になる手続きとして、忘れずに対応しましょう。
報告の対象となる企業や提出方法、期限、未提出時の注意点を詳しく確認したい方は、障害者雇用の報告義務について解説した記事も参考にしてください。
障害者雇用納付金を申告する
常用雇用労働者が100人を超える企業は、「障害者雇用納付金制度」の対象です。法定雇用率を下回っている場合には、不足する障害者数に応じて納付金を納める必要があります。
納付金は、原則として法定雇用障害者数に対する不足1人につき月額5万円です。ただし、納付金を支払えば障害者を雇用しなくてもよいという制度ではありません。企業には引き続き、法定雇用率の達成に向けて取り組むことが求められます。
自社で必要となる納付金の目安や具体的な計算方法を確認したい方は、障害者雇用納付金の金額や計算方法について解説した記事も参考にしてください。
申告・納付は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)に対して行います。申告期間は原則として毎年4月1日から5月15日までです。
申告の際には、対象期間の常用雇用労働者数や雇用障害者数などを正しく集計する必要があります。計算方法を間違えないよう、年度ごとの申告方法や必要書類を早めに確認しておきましょう。
一方、法定雇用率を上回って障害者を雇用している場合などには、条件に応じて障害者雇用調整金や報奨金を受け取れることがあります。対象になる可能性がある企業は、支給条件や申請期間もあわせて確認しておくとよいでしょう。
障害者雇用で企業が受けられる支援を解説!
障害者雇用を進める企業は、助成金や税制上の優遇措置、専門機関による採用・職場定着支援を利用できます。支援制度には対象者や雇用形態、申請期限などの条件があるため、事前に制度の内容を確認しましょう。
助成金と税制上の優遇
障害者雇用では、採用や職場環境の整備にかかる企業の負担を軽減するため、さまざまな助成金が用意されています。
たとえば、ハローワークなどの紹介を通じて障害者を継続して雇用する場合には、「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」を利用できることがあります。また、一定期間の試行雇用を通じて適性や業務との相性を確認できる「障害者トライアルコース」などもあります。
そのほか、障害者が働きやすいように施設や設備を整えたり、介助者を配置したりする際に利用できる助成制度もあります。税制上の優遇を受けられる場合もあるため、障害者雇用にかかる費用が気になる企業は確認しておきましょう。
ただし、助成金や税制優遇は、障害者を雇用すれば自動的に受けられるものではありません。対象者や雇用条件、申請期限などが決められているため、採用を進める段階から利用できる制度がないか確認しておくことが大切です。
ハローワークの職業紹介
「障害者を採用したいけれど、どこで募集すればよいかわからない」という場合は、まずハローワークに相談する方法があります。
ハローワークでは、障害のある求職者への職業紹介だけでなく、企業からの求人相談にも対応しています。どのような仕事内容で募集するのか、勤務時間をどう設定するのか、採用後にどのような配慮が必要なのかといった相談もできます。
求人を出す際は、担当してもらう仕事内容や必要なスキル、勤務日数、勤務時間、職場環境などを具体的に整理しておくと、採用後のミスマッチを防ぎやすくなります。
トライアル雇用をはじめとした支援制度について案内を受けられることもあるため、障害者雇用が初めての企業にも活用しやすい相談先です。
地域障害者職業センターの支援
採用方法だけでなく、「どのような仕事を任せればよい?」「職場でどんな配慮をすればよい?」といった悩みがある場合は、地域障害者職業センターへの相談も検討してみましょう。
地域障害者職業センターでは、障害者の採用や職場定着に関する専門的な支援を行っています。企業は、仕事内容の整理や職場環境の調整、受け入れ体制づくりなどについて相談できます。
また、必要に応じてジョブコーチによる職場適応援助を利用できる場合もあります。実際の職場で、本人への支援だけでなく、企業側に対しても業務の教え方や関わり方などについて助言を受けられる点が特徴です。
採用後に「思っていたより対応が難しい」と企業だけで抱え込まないためにも、専門機関を上手に活用しましょう。
障害者就業・生活支援センターの支援
障害者が長く働き続けるためには、仕事内容や職場環境だけでなく、生活面の安定も大切です。そこで活用できるのが、障害者就業・生活支援センターです。
障害者就業・生活支援センターでは、仕事と生活の両面から支援を行っています。企業側も、採用前の相談や職場で必要な配慮、採用後の定着について相談することができます。
たとえば、本人が仕事上の悩みを抱えている場合には、本人の同意を得ながら企業との間に入り、困っていることや必要な対応を整理してもらえることがあります。
「採用した後、社内だけでフォローできるか不安」という企業にとっても心強い相談先です。障害者本人と企業の双方が無理なく働き続けられるよう、必要に応じて外部の支援を取り入れていきましょう。
まとめ
障害者雇用促進法は、障害の有無にかかわらず、誰もが能力や適性に応じて働ける社会を実現するための法律です。企業には、法定雇用率以上の雇用、募集・採用時の差別禁止、合理的配慮の提供、相談しやすい職場環境の整備が求められます。
また、対象企業は障害者雇用状況の報告や、必要に応じた障害者雇用納付金の申告を行います。ハローワークなどの支援機関や助成金も活用し、本人と企業の双方にとって無理なく継続できる雇用を進めることが大切です。



