障害者雇用を進めたいものの、『何から始めればいいのか分からない』『自社で本当に受け入れられるだろうか』と不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、法定雇用率の基礎知識をはじめ、採用から定着までの具体的な5つのステップ、ハローワークなどの採用ルート、助成金の活用方法までを分かりやすく解説します。
この記事を読むことで、自社に合った障害者雇用への第一歩を安心して踏み出せるようになれば幸いです。
この記事を読むと分かること
- 障害者雇用は何から始めればいい?
- 採用から定着までどう進める?
- 助成金や支援制度はどう活用する?
障害者雇用を始める前に知っておきたい基礎知識
障害者雇用を進める際は、まず関連する法律や制度の内容を正しく理解することが大切です。
この章では、障害者雇用の基本的な制度と最新の動向について分かりやすく解説します。
障害者雇用の法的義務と法定雇用率の引き上げ
日本の「障害者雇用促進法」では、一定規模以上の民間企業に対して、常用労働者の数に占める障がい者の割合(法定雇用率)を満たすことを義務付けています。
この対象となる障がい者は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者です。
近年、この法定雇用率は段階的に引き上げられており、企業は最新の基準に対応する必要があります。具体的な引き上げスケジュールと対象企業の範囲は以下の通りです。
- 2024年4月からの基準:法定雇用率は2.5%に引き上げられました。これにより、常用労働者数が40.0人以上の企業が義務化の対象となります。
- 2026年7月からの基準:法定雇用率はさらに2.7%へと引き上げられることが決定しています。この段階では、対象となる企業の範囲が常用労働者数37.5人以上へと拡大します。
現在は障害者雇用の義務対象ではない企業でも、今後の事業拡大による従業員数の増加や法改正によって、対象となる可能性があります。そのため、将来的な対応に備えて、早い段階から準備を進めておくと安心です。
障害者雇用を進める企業のメリットと対策しないリスク
障害者雇用は、法的義務への対応だけでなく、企業にさまざまなメリットをもたらします。
多様な人材が活躍できる環境づくりは、企業の社会的評価や採用力の向上にもつながります。さらに、助成金や専門機関による支援を活用できる点も大きなメリットです。
一方で、法定雇用率を満たしていない企業には、障害者雇用納付金の納付が求められる場合があります。また、改善が進まない場合は行政指導の対象となり、企業名が公表される可能性もあります。
こうした状況は企業イメージの低下や採用活動への影響につながるため、早めに対策を進めることが重要です。
障害者雇用の進め方|採用までの流れをわかりやすく解説
ここでは、初めて障害者雇用に取り組む企業でもスムーズに進められるよう、5つのステップに分けて具体的な流れを解説します。
ステップ① 社内理解の促進や受け入れ体制を整理する
障害者雇用を進める最初のステップは、社内の理解を深めることと、受け入れ体制を整えることです。経営層の理解と協力はもちろん、実際に現場で一緒に働く社員にも、障害者雇用の目的や意義を丁寧に共有する必要があります。
特に現場では、「どのようなサポートが必要なのか」「業務の進め方は変わるのか」といった不安や疑問が生じることも少なくありません。そのため、事前に障がいへの理解を深める社内研修を実施したり、相談窓口となる担当者を配置したりすることが大切です。
社内全体で理解を深め、協力し合える体制を整えることで、障がいのある方も能力を発揮しやすくなり、定着にもつながります。
ステップ② 担当してもらう業務を洗い出す
次に、障がいのある方に担当してもらう業務を洗い出します。既存の業務の中から、定型化しやすい作業や、切り出し可能なタスクをリストアップすることがポイントです。
例えば、「データ入力、書類の整理・スキャン、郵便物の仕分け、オフィスの清掃、軽作業」などが挙げられます。業務を細分化し、マニュアル化を進めることで、本人が迷わずに作業に取り組めるようになり、生産性の向上にもつながります。
既存社員が抱えているノンコア業務を切り出すことで、組織全体の業務効率化にも貢献します。
ステップ③ 面接と実習による適正の確認
採用選考では、書類選考や面接に加えて、職場実習を取り入れることをおすすめします。面接だけでは分かりにくい実際の業務への適性や、職場環境・人間関係との相性を、企業と本人の双方が確認できるためです。
実習期間は数日から2週間程度が一般的で、実際の業務を体験してもらうことで、本人は入社後の働くイメージを具体的に持ちやすくなります。また、企業側も必要な配慮やサポートの内容を把握しやすくなるため、受け入れ準備を進めやすくなります。
お互いに理解を深めながら採用を進めるためにも、積極的に活用するとよいでしょう。
ステップ4 本人の特性に合わせて就労環境を整える
採用が決まったら、障害特性に合わせて働きやすい環境を整えていくことが大切です。環境整備には、設備などの物理的な対応だけでなく、業務の進め方やコミュニケーション方法の工夫といったソフト面での配慮も含まれます。
例えば、車椅子を利用する方であれば、移動しやすい動線の確保やバリアフリー化が必要になる場合があります。また、精神障害や発達障害のある方には、静かに休憩できるスペースを設けたり、口頭だけでなく書面や図を使って分かりやすく指示を伝えたりするマニュアル作りが効果的です。
すべてを一度に整える必要はなく、状況に応じて少しずつ環境を改善していきましょう。
ステップ5 定着支援を行い長く働ける環境をつくる
採用はゴールではなく、長く活躍してもらうためのスタートです。そのため、入社後の定着支援にも継続的に取り組むことが大切です。
まずは定期的な面談の機会を設け、業務上の困りごとや体調の変化、不安に感じていることがないかを丁寧に確認しましょう。早い段階で課題を把握し対応することで、安心して働き続けられる環境づくりにつながります。
また、支援は企業だけで抱え込む必要はありません。ハローワークや障害者就業・生活支援センター、ジョブコーチなどの専門機関と連携することで、客観的な視点からアドバイスやサポートを受けることができます。こうした外部機関の力も活用しながら支援体制を整えることで、本人の定着と活躍をより後押ししやすくなります。
障害者雇用を成功させる!採用ルートの選び方
障害者の採用ルートには、公的な機関から民間のサービスまでさまざまな選択肢があります。それぞれの特徴やメリットを理解し、最適なルートを組み合わせましょう。
ハローワークの活用と紹介状の仕組み
ハローワーク(公共職業安定所)は、障害者雇用において最も一般的かつ代表的な採用ルートです。無料で求人票を掲載できるため、採用コストを抑えたい企業に適しています。
ハローワークには障害者専門の窓口が設置されており、専門の相談員が企業の求人活動をサポートしてくれます。
また、ハローワークを通じて応募者が紹介される際には「紹介状」が発行されます。この紹介状を経由して採用することが、特定求職者雇用開発助成金などの国からの各種助成金を受給するための必須要件となっているケースが多いため、手続きの流れを事前に確認しておくことが大切です。
障害者就業・生活支援センターなどの専門機関との連携
障害者就業・生活支援センターは、障がいのある人の「仕事」と「生活」の両面を一体的に支援する公的な機関です。
このセンターと連携することで、業務への適性だけでなく、生活リズムや体調管理といった就労を継続するための基礎的な状況を把握した上で採用を進められます。
また、地域障害者職業センターや特別支援学校なども有力な相談先です。これらの専門機関は、採用時だけでなく、入社後の職場定着支援(ジョブコーチの派遣など)もサポートしてくれるため、社内に障害者雇用のノウハウが少ない企業にとって心強いパートナーとなります。
民間人材紹介会社や求人サイトの活用
民間企業が運営する障害者専門の人材紹介会社や求人情報サイトを活用するルートです。
採用時に成果報酬などの費用が発生しますが、専任のキャリアアドバイザーが自社の要望にマッチした求職者をスクリーニングして推薦してくれるため、採用活動の効率化とミスマッチの防止につながります。
特に、パソコンスキルや事務経験、特定の専門知識を持つ人材を採用したい場合や、スピーディーに採用活動を進めたい場合に有効な選択肢です。企業の魅力や配慮事項を求職者に正しく伝えてくれるため、質の高い母集団形成が期待できます。
初期費用・設備投資0円|障害者雇用支援「ファーマーズマーケット」の魅力
「障害者雇用を進めたいけれど、自社に任せられる業務が見つからない」「受け入れ体制を整えられるか不安」と悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。そんな企業におすすめなのが、障害者雇用支援サービス「ファーマーズマーケット」です。
ファーマーズマーケットは、企業が障害者を直接雇用し、設備の整ったファーマーズマーケットの農園で野菜などの栽培業務に従事してもらう仕組みです。自社オフィスではなく、障害者雇用に配慮された環境で働いてもらえるため、業務の切り出しや受け入れ体制の整備に悩む企業でも導入しやすいのが特長です。
また、初期費用や設備投資は0円のため、大規模なバリアフリー改修なども必要ありません。農園には専門スタッフが常駐しており、日々の業務や体調面のサポートも受けられるため、障害者雇用が初めての企業でも安心してスタートしやすいサービスです。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
障害者雇用を成功させるために押さえたいポイントを解説
ここでは、企業が必ず押さえておくべき「合理的配慮」の考え方と、企業の経済的負担を軽減できる「助成金制度」について詳しく解説します。
合理的配慮の考え方と具体例
合理的配慮とは、障がいのある人が職場で他の従業員と平等に働けるよう、企業側が個々の障害特性や要望に応じて行う必要な調整や変更のことです。
障害者雇用促進法により、民間企業における合理的配慮の提供は義務化されています。過度な財政的・事務的負担がない範囲で、対話を通じて適切な配慮を行うことが求められます。
合理的配慮の具体的な実施例
合理的配慮は、障がいの種類や個人の状況によって異なります。代表的な具体例は以下の通りです。
- 身体障害(視覚・聴覚など)への配慮:
- 車椅子を利用する社員のために、オフィスの通路を広く確保し、スロープや多目的トイレを設置する。
- 聴覚障害のある社員とのコミュニケーションのために、筆談具やチャットツール、音声認識アプリを導入する。
- 知的障害・発達障害への配慮:
- 口頭での指示だけでなく、写真や図を用いたマニュアルを作成し、視覚的に業務手順を理解できるようにする。
- 一度に複数の指示を出さず、一つずつ業務を切り分けて指示を出す。
- 精神障害への配慮:
- 体調に合わせて通院ができるよう、フレックスタイム制や有給休暇の柔軟な取得を認める。
- 緊張や不安を和らげるため、定期的な面談を行い、相談しやすい体制を整える。
助成金制度の活用によるコスト負担の軽減
障害者雇用を進めるにあたり、設備の改修や指導員の配置など、初期費用や運営コストが発生することがあります。国は企業の負担を軽減するため、さまざまな助成金制度を設けています。
これらを賢く活用することで、コストを抑えながら安定した雇用環境を整備できます。
代表的な助成金制度
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):
ハローワークなどの紹介により、身体障害者、知的障害者、精神障害者を継続して雇用する労働者として雇い入れる企業に対して、賃金の一部が助成されます。短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の雇用も対象となります。 - 障害者雇用安定助成金(障害者雇用定着支援コース):
障害特性に応じた雇用管理や柔軟な働き方の工夫、社内理解を深めるための研修などを行い、障がい者の職場定着を図る取り組みに対して助成されます。専門の支援員(ジョブコーチなど)を配置・活用する際にも利用可能です。 - 障害者作業施設設置等助成金:
障がい者を雇い入れるために、作業施設や設備の設置・整備、バリアフリー化などを行う場合に、その費用の一部が支給されます。スロープの設置や車椅子用トイレの改修、専用の作業用具の購入などが該当します。
これらの助成金は、申請期限や支給要件が細かく定められているため、採用計画を立てる段階でハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)などの専門機関に相談し、事前に申請手順を確認しておくことが大切です。
まとめ
障害者雇用を成功させるためには、法定雇用率の達成という義務の履行にとどまらず、計画的な準備と体制整備を進めることが重要です。社内理解の促進や業務の切り出し、ハローワーク等の専門機関との連携を丁寧に行うことで、採用のミスマッチを防ぎ、長期的な定着へとつながります。
合理的配慮の提供や助成金の活用は、企業のコストや負担を軽減し、双方にとって豊かな就労環境を創出する鍵となります。本記事のステップを参考に、自社に最適な障害者雇用を推進していきましょう。



