初めて障害者雇用に取り組む際、「何から準備すべきか」「法的な義務やペナルティはどうなっているか」と不安を感じていませんか?
この記事では、障害者雇用促進法や法定雇用率といった基礎知識から、業務切り出しや合理的配慮などの具体的な準備4ステップ、ハローワーク等の相談先までわかりやすく解説します。
制度への理解を深め、スムーズな採用活動をスタートさせましょう。
この記事を読むと分かること
- 初めての障害者雇用は何から始めればいい?
- 障害者雇用で必要な制度や準備とは?
- 採用後に定着させるためのポイントは?
障害者雇用を始める前に知っておきたい基礎と制度
初めて障害者雇用に取り組む企業にとって、まず理解すべきなのは、法律で定められたルールと制度の全体像です。
まずは、基本となる法律や制度についてみていきましょう。
障害者雇用促進法と法定雇用率の仕組み
障害者雇用の基本となる法律が「障害者雇用促進法」です。この法律では、事業主に対して、一定割合以上の障がい者を雇用することを義務付けています。
この割合を「法定雇用率」と呼びます。
民間企業における法定雇用率は、段階的に引き上げが行われています。2024年4月からは「2.5%」となり、対象となる企業の範囲は従業員数40.0人以上に広がりました。さらに、2026年7月には「2.7%」(対象は従業員数37.5人以上)への引き上げが予定されています。
法定雇用率に基づく必要雇用人数は、「常用労働者数 × 法定雇用率」で計算され、端数は切り捨てとなります。例えば、常用労働者が100人の企業の場合、100人 × 2.5% = 2.5人となり、小数点以下を切り捨てるため、2人の障がい者を雇用する義務が生じます。
対象となる障がい者の範囲
障害者雇用率制度において、雇用のカウント対象となるのは、原則として国が交付する「障害者手帳」を所持している方です。障がいの種類は、大きく以下の3つに分類されます。
- 身体障害者:身体障害者手帳の交付を受けている方(視覚、聴覚、内部障害など)
- 知的障害者:療育手帳(自治体によっては愛の手帳など)の交付を受けている方
- 精神障害者:精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方(統合失調症、うつ病、発達障害、てんかんなど)
なお、障がいの程度や勤務時間によって、雇用人数のカウント方法が異なります。
週30時間以上勤務する常用労働者の場合、原則として1人の雇用は「1人分」とカウントされますが、重度の身体障害者または重度の知的障害者を雇用する場合は、1人の雇用で「2人分」としてダブルカウントすることができます。
また、週20時間以上30時間未満の短時間労働者の場合は、原則「0.5人分」としてカウントされます。さらに、法改正により、週10時間以上20時間未満で働く「特定短時間労働者」についても、一定の条件を満たす場合は「0.5人分」として算定できるようになっています。
障害者雇用納付金制度と未達成時のペナルティ
法定雇用率を達成している企業と、未達成の企業との間における経済的負担の公平性を保つために設けられているのが「障害者雇用納付金制度」です。
この制度は、常用労働者が100人を超える企業が対象となります。
法定雇用率が未達成の場合、不足している障がい者1人につき月額50,000円の「障害者雇用納付金」を国に納付しなければなりません。逆に、法定雇用率を超えて障がい者を雇用している企業に対しては、超過人数1人につき月額29,000円の「障害者雇用調整金」が支給されます。また、常用労働者100人以下の企業であっても、一定数以上の障がい者を雇用している場合には「報奨金」が支給される仕組みがあります。
未達成企業に対するペナルティは、納付金の支払いだけではありません。雇用状況が著しく悪い企業に対しては、ハローワークから「障害者雇入れ計画」の作成命令が出されます。この計画の実施期間中も改善が見られない場合、厚生労働省によって「企業名の公表」が行われます。
企業名が公表されると、企業の社会的信用やブランドイメージが大きく低下し、採用活動や取引関係にも深刻な悪影響を及ぼすリスクがあります。
初めて障害者雇用に取り組む企業が準備すべき4つのステップ
初めて障害者雇用に取り組む企業が、受け入れをスムーズに進め、定着率を高めるために不可欠な4つの準備ステップを解説します。事前の丁寧な準備が、採用後のミスマッチを防ぐ鍵となります。
障がいのある方が担当する業務を洗い出す
障害者雇用を進める最初のステップは、社内にある業務の中から「障がいのある方が無理なく担当できる業務」を切り出すことです。既存の業務プロセスを細分化し、定型的でマニュアル化しやすいタスクをリストアップします。
具体的には、以下のような業務が対象となりやすい傾向にあります。
- PCによるデータ入力やリスト作成
- 書類のスキャン、PDF化、ファイリング
- 郵便物の仕分け、発送準備
- 社内便の回収・配布
- オフィスの清掃や備品の管理・補充
障がいの特性(身体、知的、精神、発達)によって得意・不得意は異なります。まずは特定の個人を想定する前に、社内で切り出し可能な業務を幅広く洗い出すことが重要です。
合理的配慮の提供に向けた環境づくり
障害者雇用促進法に基づき、企業には障がいのある方に対する「合理的配慮」の提供が義務付けられています。
合理的配慮とは、働く上での障壁(バリア)を取り除くための個別的な対応のことです。過度な財政的・組織的負担にならない範囲で、以下のような環境整備を検討します。
- 物理的環境の整備:車椅子が通れる通路幅の確保、段差へのスロープ設置、デスクの高さ調整など
- 情報・コミュニケーションの支援:音声読み上げソフトの導入、筆談ボードの用意、指示書のテキスト化など
- 業務遂行上の配慮:静かに休憩できるスペースの確保、パーテーションによる視線の遮断、勤務時間の調整など
環境づくりは、採用予定者の障がい特性や希望を丁寧にヒアリングしながら、個別に調整していくことが基本となります。
社内理解・受け入れ体制の整理について研修
障害者雇用を成功させるためには、実際に一緒に働く配属先のメンバーだけでなく、全社的な理解と協力が欠かせません。「どのように接すればよいか分からない」といった現場の不安を解消するため、事前に社内研修や説明会を実施します。
研修や体制整理において、以下のポイントを共有します。
- 企業が障害者雇用に取り組む目的と社会的意義の周知
- 代表的な障がい特性(精神障がい、発達障がいなど)に関する基礎知識の学習
- 「指示は具体的に、1つずつ出す」「視覚的なマニュアルを活用する」といった指導方法の工夫
- 体調不良時の連絡ルートや、社内の相談窓口(キーパーソン)の明確化
現場の特定の社員だけに負担が集中しないよう、チーム全体でサポートし合える体制を整えることが大切です。
採用計画を立てて募集・選考を進める
業務の切り出しと受け入れ体制の準備が整ったら、具体的な採用計画を策定して募集活動を開始します。採用計画では、雇用形態(フルタイム、パートタイム)、勤務時間、勤務地、求めるスキルなどを明確にします。
募集と選考を進める際は、以下の流れを意識します。
- 募集ルートの選定:ハローワークへの求人申し込みのほか、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関、特別支援学校、障害者専門の人材紹介会社などを活用します。
- 選考と面接:面接では、本人の同意を得た上で、障がいの状況や必要な合理的配慮、通院の頻度などを確認します。
- 職場実習の実施:採用前に数日から2週間程度の実習(職場体験)を取り入れることで、業務への適性や職場環境との相性を事前にお互い確認でき、ミスマッチ防止に極めて有効です。
障害者雇用を初めて行う際の採用プロセスと相談先
初めての障害者雇用では、自社だけで採用活動を進めるのは簡単ではありません。専門知識を持つサービスと連携しながら、段階的に進めることが大切です。
ここでは、具体的な相談先と採用プロセスのポイントを解説します。
ハローワークや地域障害者職業センターとの連携
障害者雇用を進める上で、最も代表的な相談先が「ハローワーク(公共職業安定所)」です。ハローワークには障害者専門の窓口があり、求人の申し込みだけでなく、企業の条件に合った求職者の紹介や、各種助成金の手続きに関するアドバイスを受けることができます。
また、専門的な支援を行う「地域障害者職業センター」との連携も効果的です。同センターでは、ジョブコーチ(職場適応援助者)の派遣をはじめ、障がい者個々の特性に応じた雇用管理のノウハウを企業に提供しています。
さらに、就労面と生活面の両方を支える「障害者就業・生活支援センター」とも連携することで、採用後の安定した雇用維持が可能になります。
実習の受け入れによるマッチングの確認
採用後のミスマッチや早期離職を防ぐためには、正式に雇用する前に「職場実習」を実施することが効果的です。実際の職場で一定期間働いてもらうことで、書類選考や面接だけでは分かりにくい業務への適性や職場環境との相性を、企業と本人の双方が確認できます。
職場実習の期間は数日から2週間程度が一般的です。実習を通じて、本人が必要とする配慮や得意な業務、働くうえでの課題などを具体的に把握できるため、採用後の受け入れ準備を進めやすくなります。
また、本人にとっても仕事内容や職場の雰囲気を事前に確認できるため、安心して就職を検討できるメリットがあります。結果として、入社後のミスマッチを減らし、長期的な定着につなげやすくなります。
16年のノウハウでサポート|障害者雇用支援「ファーマーズマーケット」の魅力
自社での業務切り出しや環境整備に不安がある企業には、民間が提供する障害者雇用支援サービスの活用がおすすめです。
なかでも、ファーマーズマーケットは、16年にわたる障害者雇用支援の実績をもとに、企業の障害者雇用をサポートしています。
障害者雇用の経験がない企業でも導入しやすいよう、農場見学から実習、振り返り、面接、採用までを一貫して支援し、採用前のミスマッチ防止にも力を入れています。特に、採用前に約2週間の実習を実施することで、企業と求職者がお互いの適性を確認できる仕組みが特徴です。
さらに、定着率95%、平均勤続年数10年という実績を持ち、長期的な雇用を実現をしています。農業を活用した独自の雇用モデルにより、法定雇用率の達成だけでなく、社会貢献や地域活性化にもつながる点が大きな魅力です。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
初めての障害者雇用で失敗しないための注意点とは
初めての障害者雇用では、採用すること自体がゴールになりがちですが、本当に重要なのは採用後のサポートです。
ここでは、初めての障害者雇用で失敗を避けるために、企業が特に意識すべき3つの注意点と具体的な対策を解説します。
採用後が大切|定期的な面談とメンタルヘルスのケア
障がいのある社員が安定して働き続けるためには、入社後のフォロー体制を確立することが重要です。特に精神障がいや発達障がいのある方は、体調の波や業務上の不安、人間関係の悩みを周囲に相談できず、一人で抱え込んでしまう傾向があります。これらが早期離職につながるケースは少なくありません。
対策として、週に1回や月に1回など、定期的かつ継続的な個別面談(1on1)を実施しましょう。面談では業務の進捗状況だけでなく、体調の変化や職場の居心地、合理的配慮が適切に機能しているかなどをヒアリングします。
また、社内の産業医や衛生管理者はもちろん、外部の障害者就業・生活支援センターやジョブコーチなどの専門機関とも連携し、本人が安心して相談できる窓口を複数用意しておくことが、メンタルヘルスの悪化を防ぐ鍵となります。
業務マニュアルの作成とわかりやすい工夫
「指示した通りに動いてくれない」「作業手順をなかなか覚えてもらえない」といったトラブルの多くは、コミュニケーションのズレや指示の曖昧さが原因です。口頭だけの指示は誤解を生みやすいため、誰が見ても理解できる業務マニュアルを作成しましょう。
マニュアルを作成・運用する際は、以下のポイントを意識することが有効です。
- 「適当に」「なるべく早く」といった抽象的な表現を避け、「15時までに」「3回折り曲げる」など具体的な数値や手順で示す。
- テキストだけでなく、作業手順を写真やイラスト、図解、動画などを用いて視覚的に分かりやすく表現する。
- 一連の業務を細かなステップに切り分け、作業の進捗を自己確認できるチェックリストを作成する。
このように業務を視覚化・標準化することは、障がいのある社員の自立を促すだけでなく、部署全体の業務効率化や他の社員の負担軽減にもつながります。
助成金制度を活用したコスト負担の軽減
初めての障害者雇用では、スロープの設置や車椅子用トイレの整備といったハード面の改修、指導員(サポート社員)の配置、特別な器具の購入など、一定の初期費用や運営コストが発生することがあります。これらのコスト負担を軽減するために、国や自治体が提供する助成金制度を賢く活用しましょう。
代表的な助成金には、以下のようなものがあります。
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース):ハローワーク等の紹介により、障がい者等の就職困難者を継続して雇用する事業主に対して、賃金の一部が助成されます。
- 障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース):障がいのある労働者の職場定着を図るため、社内支援者の配置や、柔軟な働き方の工夫などの措置を行った事業主に助成されます。
助成金の受給には、雇い入れ前の計画届の提出や、対象となる労働者の要件など、細かな申請条件が定められています。
採用活動を始める前に、ハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)などの窓口へ事前に相談し、申請手続きの流れを確認しておくことが大切です。
まとめ
初めての障害者雇用を成功させるには、制度の理解と丁寧な準備が大切です。法定雇用率の達成を目指すだけでなく、社内の業務洗い出しや合理的配慮の提供、社内研修を通じた受け入れ体制の構築を段階的に進めましょう。
採用時のミスマッチを防ぎ定着率を高めるためには、ハローワークなどの専門機関や、実績のある障害者雇用支援サービス「ファーマーズマーケット」などの外部サービスを積極的に活用しましょう。事前の準備と適切なサポート体制を整えることが、企業と障がい者双方にとって豊かな雇用関係を築くポイントとなります。



