障害者雇用を進めたいと思っても、「どこで募集すればいい?」「面接では何を確認すればいい?」など、採用の進め方に迷う企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、障害者雇用促進法や法定雇用率などの基礎知識から、ハローワーク・人材紹介会社・就労移行支援事業所などを活用した採用方法、募集から面接、内定までの流れを分かりやすく解説します。
本人の適性に合った仕事や働きやすい環境まで考えながら、自社に合う採用方法を見つけていきましょう。
採用方法を検討する前に知っておきたい基礎知識!
障害者雇用を始めるときは、すぐに求人を出すのではなく、まず企業に求められるルールや必要な採用人数について確認しておくことが大切です。法定雇用率などの制度はもちろん、どのような仕事を任せるのか、どのような環境なら安心して働けるのかまで考えたうえで採用を進めましょう。
障害者雇用促進法と企業の義務
障害者雇用は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づいて進められています。一定数以上の従業員を雇用している企業には、法定雇用率以上の障害者を雇用することが義務付けられています。
また、募集や採用、入社後の働き方において、障害があることを理由に不当な扱いをすることは禁止されています。働くうえで何らかの配慮が必要な場合には、本人と話し合いながら合理的配慮について検討することも企業に求められます。
たとえば、仕事の指示を書面で伝える、勤務時間を調整する、必要な設備を整えるなど、できる配慮はさまざまです。障害名だけで「この仕事は難しい」と判断するのではなく、本人の得意なことや経験、希望する働き方と仕事内容を照らし合わせながら考えていきましょう。
法定雇用率と障害者雇用納付金制度
法定雇用率とは、企業が雇用する従業員に対して、一定割合以上の障害者を雇用するよう定められた基準です。民間企業の法定雇用率は2026年7月からは2.7%に引き上げられています。
ただし、実際に何人採用する必要があるのかは、企業の従業員数だけで単純に決まるわけではありません。勤務時間や障害の程度などによって算定方法が異なり、短時間で働く方が対象になるケースもあります。採用計画を立てる際は、自社に必要な雇用人数を確認しておきましょう。
また、一定規模以上の企業が法定雇用率を達成していない場合には、障害者雇用納付金の対象となることがあります。ただし、納付金を支払えば障害者を雇用しなくてもよいという制度ではありません。雇用率を満たすことだけを目的にするのではなく、長く働ける職場づくりまで含めて取り組むことが大切です。
採用人数と雇用形態を決めよう
「何人採用すれば雇用率を達成できるか」だけで採用人数を決めてしまうと、実際に任せる仕事や受け入れ体制が追いつかないことがあります。まずは社内にどのような仕事があるのかを洗い出し、任せられる業務や必要なサポートを整理してみましょう。
雇用形態には、正社員や契約社員、パート・アルバイトなどがあります。本人の希望や仕事内容、勤務時間などを踏まえ、無理なく働き続けられる条件を考えることが大切です。契約期間や勤務日数、給与、休日などについても、応募する方が判断しやすいよう求人票に分かりやすく記載しましょう。
また、採用前には「誰が仕事を教えるのか」「困ったときは誰に相談できるのか」といった点も決めておくと安心です。採用人数だけを先に決めるのではなく、仕事内容や指導担当者、相談窓口、必要な配慮まで準備しておくことで、入社後も働き続けやすい環境をつくれます。
障害者雇用の求人を募集する方法はなにがある?
障害者雇用の求人を出したいと思っても、「どこで募集すればいいのか分からない」と迷うこともあるでしょう。ハローワークだけでなく、人材紹介会社や就労移行支援事業所、特別支援学校、求人サイトなどさまざまな方法があるため、自社が求める人材や仕事内容に合わせて選ぶことが大切です。
ひとつの方法に絞る必要はありません。複数の募集先を活用しながら、求職者との接点を増やしていきましょう。
求人を出しても応募が集まらない場合は、募集先だけでなく、業務内容や応募条件、受け入れ体制に原因がないか見直すことも大切です。障害者雇用でうまく採用できない原因と改善するポイントについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
ハローワークで求人を出す
ハローワークでは、障害のある方を対象とした求人を出したり、条件に合う求職者を紹介してもらったりできます。無料で利用できるため、障害者雇用を始める際の選択肢として取り入れやすい方法です。
求人を出すときは、仕事内容や勤務時間、勤務地、雇用形態などをできるだけ具体的に伝えましょう。どのような配慮ができるのかも整理しておくと、求職者が自分に合った職場か判断しやすくなります。
また、求人内容や採用条件について相談できる窓口もあります。「初めての障害者雇用で求人の出し方が分からない」という場合は、相談しながら進めるのもよいでしょう。
障害者専門の人材紹介会社を利用する
「条件に合う人材を自社だけで探すのが難しい」という場合は、障害者雇用に特化した人材紹介会社を利用する方法があります。
希望する経験やスキルなどの採用条件を伝えることで、それに合った求職者を紹介してもらえます。採用要件の整理や面接の日程調整などをサポートしてくれるサービスもあり、障害者雇用の経験が少ない企業にも利用しやすいでしょう。
ただし、利用できるサービスや料金は人材紹介会社によって異なります。どこまでサポートしてもらえるのか、費用はどのくらいかかるのかを確認してから利用することが大切です。
就労移行支援事業所や特別支援学校と連携する
就労移行支援事業所や特別支援学校とつながりを持ち、仕事を探している方を紹介してもらう方法もあります。
就労移行支援事業所では、一般企業への就職を目指す方が、仕事に必要な知識やスキルを身につけるための訓練を受けています。支援員と相談しながら採用を進められるため、本人の得意なことや必要な配慮について理解を深めやすいのも特徴です。
また、新卒採用を考えている場合は、特別支援学校への求人も選択肢になります。進路指導の担当者と相談しながら、求人の時期や仕事内容などを伝えましょう。
どちらの場合も、給与や勤務時間といった条件だけでなく、実際に任せる仕事や職場環境、通勤方法、サポート体制まで具体的に伝えることがポイントです。
求人サイトや自社採用ページを活用する
障害者雇用に特化した求人サイトや一般的な求人サイト、自社の採用ページから募集する方法もあります。インターネットで仕事を探している方に求人を見つけてもらいやすく、採用の間口を広げられる方法です。
ただし、求人を見てもらえても、仕事内容や働き方が分からなければ応募にはつながりにくくなります。「障害者歓迎」と記載するだけでなく、実際に担当する仕事や勤務時間、給与、応募条件などを具体的に伝えましょう。
通院に合わせた勤務日の調整や休憩の取り方、設備面など、相談できる配慮があれば一緒に記載しておくと、応募者も入社後の働き方をイメージしやすくなります。
それぞれの募集方法の特徴や、自社に合った採用経路の選び方、応募につながりやすい求人票の作り方については、障害者雇用の求人・募集方法を詳しく解説した記事も参考にしてください。
障害者雇用支援「ファーマーズマーケット」を活用する
「障害者雇用を進めたいけれど、社内に任せられる仕事が見つからない」「採用や定着まで自社だけで対応できるか不安」という企業には、障害者雇用支援「ファーマーズマーケット」という選択肢があります。
ファーマーズマーケットは、農業を企業の新たな職域として活用し、人材採用から農業運営の安定化までサポートしています。16年の障害者雇用支援のノウハウがあり、初期費用・設備投資は0円。自社で農地や設備を用意する必要がないため、これまで障害者雇用の経験が少なかった企業でも始めやすい仕組みです。
さらに、定着率は95%。採用することだけでなく、長く働ける環境づくりまで考えられている点も特徴です。「法定雇用率への対応は必要だけれど、採用方法や仕事の切り出し方が分からない」という企業こそ、一度検討してみてはいかがでしょうか。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
障害者雇用の募集から採用までの流れを整理!
仕事内容と本人の得意なことが合っているか、どのような配慮が必要なのかなども、採用の段階から少しずつ確認していきましょう。
求人を出して応募者を募集する
まずは、どのような人を採用したいのかを考える前に、任せる仕事内容を整理します。職種や具体的な業務内容、雇用形態、勤務時間、勤務地、給与、仕事に必要なスキルなどを明確にしておきましょう。
求人は、ハローワークや障害者雇用に特化した人材紹介会社、求人サイト、自社の採用ページなどで募集できます。就労移行支援事業所や特別支援学校と連携し、求職者を紹介してもらったり、職場見学や実習につなげたりする方法もあります。
また、「勤務時間は相談できる」「通院日は調整できる」「応募前の職場見学ができる」など、対応可能なことがあれば求人票にも記載しておきましょう。働き方を具体的に伝えることで、応募者も自分に合う求人か判断しやすくなります。
書類選考と面接を実施する
書類選考では、障害があることだけで判断するのではなく、これまでの経験や持っているスキル、実際の仕事内容との相性などを確認します。
面接でも、障害について詳しく聞くことだけが目的にならないよう注意しましょう。これまで経験した仕事や得意な作業、苦手なことなどを聞きながら、任せる予定の仕事ができそうかを確認していきます。
あわせて、勤務時間や通院、休憩の取り方など、働くうえで必要な配慮についても話し合います。企業側からも仕事内容や職場環境を具体的に説明し、お互いに認識のずれがないか確認することが大切です。
面接で具体的に何を聞けばよいか迷う場合は、障害者雇用の面接で使える質問例や確認すべきポイントも参考にしてください。
面接方法や場所、時間などについて配慮の希望がある場合は、事前に確認しておくとスムーズです。どのような対応が必要なのかを企業側だけで決めず、本人と相談しながら考えていきましょう。
★採用前の職場見学や実習がおすすめ!
「面接だけでは、本当に仕事が合っているのか判断しにくい」と感じることもあるでしょう。そんなときは、採用前に職場見学や実習の機会を設ける方法があります。
応募者は実際の職場や仕事内容を確認でき、企業側も仕事への取り組み方や得意な作業、どのようなサポートが必要なのかを知るきっかけになります。お互いが入社後の働き方をイメージできるため、ミスマッチを防ぐうえでも役立ちます。
社内で相談して内定するか決定、入社準備
面接や実習などが終わったら、応募者に仕事を任せられるか、必要なサポートを用意できるかを社内で確認します。採用担当者だけで決めるのではなく、実際に一緒に働く上司や現場の担当者とも相談したうえで判断しましょう。
採用が決まったら、給与や勤務時間、仕事内容、入社日、試用期間などの労働条件を伝えて内定を通知します。入社後に「聞いていた条件と違った」とならないよう、本人と内容を確認しておくことが大切です。入社日までには、仕事を教える担当者や相談先を決め、必要に応じて業務マニュアルや座席、休憩場所なども準備します。本人から共有された障害や配慮に関する情報は、必要な範囲で適切に取り扱いましょう。
採用が決まれば終わりではありません。入社後も定期的に話す機会をつくり、仕事で困っていることや必要な配慮に変化がないか確認していくことが、長く働ける環境づくりにつながります。
障害者雇用の採用で注意するべきポイント
障害者雇用では、「採用人数を確保できれば終わり」ではなく、入社後も無理なく働き続けられるかまで考えて採用を進めることが大切です。求人を出す前から採用後まで、企業側が気をつけておきたいポイントを確認しておきましょう。
採用時の面接で押さえておきたい進め方や注意点については、障害者雇用の面接で押さえておきたいポイントを解説した記事も参考にしてください。
障害者雇用率だけを目的にしない
法定雇用率を達成することは企業にとって必要ですが、人数を満たすことだけを優先してしまうと、仕事内容が本人に合わず、早期離職につながることがあります。
まずは「どのような仕事を任せたいのか」「その仕事にはどのようなスキルが必要なのか」を整理しましょう。そのうえで、本人の得意なことや経験、希望する働き方などを確認し、力を発揮できる仕事を考えていくことが大切です。
障害の種類だけで向き・不向きを決めるのではなく、実際の仕事に必要な能力や、どのような配慮があれば働けるのかを一人ひとり確認しながら採用を進めましょう。
求人内容と実際の業務に差をつくらない
求人票を見て応募したものの、入社してみたら「聞いていた仕事内容と違う」「思っていた働き方ができない」となれば、本人も不安を感じてしまいます。採用後のミスマッチを防ぐためにも、実際の仕事内容や労働条件を正しく伝えることが大切です。
求人票には、勤務時間や勤務地、給与、雇用形態などの基本的な条件に加えて、実際に担当する仕事をできるだけ具体的に記載しましょう。「簡単な事務作業」「軽作業」といった表現だけではなく、「データ入力」「書類の整理」「商品の梱包」など、何をする仕事なのかが分かる内容にすると伝わりやすくなります。
勤務時間の調整や通院への対応、休憩の取り方などについても、事前に伝えられることは説明しておくと、お互いの認識を合わせやすくなります。
求人や面接での認識のずれが採用後の早期離職につながるケースもあります。障害者雇用でミスマッチが起こる原因と防ぐためのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
合理的配慮を一方的に決めない
必要な配慮は、障害の種類が同じだからといって全員が同じとは限りません。「この障害ならこの対応」と企業側だけで決めず、本人がどのような場面で困るのかを聞きながら一緒に考えていきましょう。
たとえば、仕事の指示を文章で伝える、作業手順を分かりやすくする、勤務時間を調整する、落ち着いて休憩できる場所を用意するなど、さまざまな方法があります。
また、入社時に決めた配慮が、その後もずっと適しているとは限りません。実際に働くなかで困りごとが出てきたら、本人と話し合いながら必要に応じて見直していきましょう。
障害や健康に関する情報を扱う際は、プライバシーへの配慮も欠かせません。職場で共有する必要がある場合も、本人の意向を確認したうえで、業務上必要な人に必要な内容だけを伝えることが大切です。
採用後の定着とキャリア形成まで考える
採用が決まるとひと安心ですが、実際の雇用はそこから始まります。長く働いてもらうためには、入社後に困ったことを相談できる環境や、仕事の状況を確認できる機会を用意しておくことが大切です。
特に入社して間もない時期は、仕事内容や職場の人間関係、新しい生活リズムなどに慣れるまで時間がかかることもあります。定期的に面談を行い、仕事量や職場環境などで困っていることがないか確認しましょう。
また、同じ仕事を続けてもらうことだけを考えるのではなく、本人の希望や成長に合わせて、新しい仕事への挑戦やスキルアップの機会をつくることも大切です。働き続けるなかでできることを増やし、その力をきちんと評価していくことが、長く活躍できる職場づくりにつながります。
賢く活用!障害者雇用の採用で活用できる支援制度
障害者雇用では、採用活動にかかる負担や、職場環境の整備に必要な費用を支援する制度を利用できる場合があります。制度ごとに対象となる障害者、雇用形態、申請期限、支給要件が異なるため、採用計画の段階で確認しておきましょう。
ハローワークの職業紹介と助成金
ハローワークでは、障害のある求職者の職業紹介だけでなく、求人条件や仕事内容に関する相談、採用後の職場定着に向けた支援も受けられます。障害者雇用に関する助成金の案内や、申請手続きについて相談できる点もメリットです。
助成金のなかには、ハローワークなどの職業紹介を受けて採用することが要件となるものがあります。助成金の利用を検討する場合は、求人を出す前に対象要件や必要書類を確認し、採用後ではなく所定の期限内に手続きを進めることが重要です。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、障害のある求職者を一定期間試行的に雇用し、適性や業務への対応状況を確認する企業を支援する制度です。企業と求職者が仕事内容や職場環境との相性を確認したうえで、継続雇用につなげられます。
障害者を対象としたトライアル雇用には、一定期間の雇用を前提とする制度や、短時間勤務から始める制度があります。利用には、対象となる求職者の要件、雇用期間、労働時間、ハローワークなどの紹介といった条件があります。
トライアル雇用を実施する際は、試行期間中の業務内容、勤務時間、評価方法、継続雇用の判断基準をあらかじめ明確にしておきましょう。助成金の支給要件や申請方法は、管轄のハローワークで確認してください。
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金は、就職が特に困難な求職者を、ハローワークなどの紹介によって継続して雇用する事業主を支援する制度です。障害者を対象としたコースがあり、雇用形態や障害の程度、企業規模などに応じて助成内容が異なります。
対象となるには、雇用保険の加入、一定期間以上の継続雇用、適正な労働条件の設定など、複数の要件を満たす必要があります。採用後に申請できない場合もあるため、求人の申し込みや採用決定の前に、対象者と助成額、支給期間、申請期限を確認しておくことが大切です。
助成金を利用する場合でも、最低賃金や労働関係法令を守り、本人の希望や能力に合った業務を設定しなければなりません。助成金の受給を採用の主な目的にせず、継続的に働ける職場づくりとあわせて活用しましょう。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金
障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、障害者を雇用する企業が行う職場環境の整備や雇用管理を支援する制度です。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が、制度に基づく助成金の申請を受け付けています。
助成対象には、障害者の作業を容易にするための設備や施設の設置、障害者の介助、職場適応援助者による支援、通勤を容易にするための措置などがあります。たとえば、作業設備の改修、手すりやスロープの設置、介助者の配置、通勤用車両の整備などが対象となる場合があります。
助成金の対象経費、助成率、支給上限、申請時期は制度や措置によって異なります。設備の発注や工事、支援者の配置を始める前に、対象となるかを確認することが必要です。申請にあたっては、見積書や計画書などの書類が求められるため、早めに相談しましょう。
利用できる制度は、企業の規模、雇用する障害者の状況、実施する支援内容によって変わります。ハローワークや独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に相談し、最新の支給要件と申請手続きを確認したうえで活用することが重要です。
まとめ
障害者雇用の採用では、障害者雇用促進法や法定雇用率を確認したうえで、必要な人数・業務内容・雇用形態を決めることが重要です。ハローワーク、人材紹介会社、就労移行支援事業所などを活用し、職場見学や実習を通じて相互理解を深めると、ミスマッチの防止につながります。
採用後の定着を実現するには、本人と相談しながら合理的配慮を行い、業務やキャリアを継続的に見直すことが欠かせません。助成金や支援制度も活用し、法定雇用率の達成だけを目的としない採用を進めましょう。



