「障害者雇用納付金はいくらかかるの?」「自社は対象になるの?」と疑問に感じている企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、不足人数ごとの納付額がわかる早見表をはじめ、納付金の対象となる企業の条件や、法定雇用率に基づく計算方法、申告の流れについてわかりやすく解説します。また、障害者雇用調整金・報奨金との違いや経費計上の考え方、申告先など、実務で迷いやすいポイントもあわせて紹介します。
「自社で納付金が発生するのか確認したい」「計算方法や制度を正しく理解したい」という方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むと分かること
- 障害者雇用納付金の対象となる企業は?
- 納付金はいくらで、どのように計算する?
- 申告や調整金・報奨金で注意することは?
そもそも障害者雇用納付金制度とは?キホンをおさらい
ここでは、障害者雇用納付金制度の仕組みや目的についてわかりやすく解説します。
「納付金って罰金なの?」「何のためにある制度なの?」と疑問に感じている方は、まず基本から確認していきましょう。
障害者雇用納付金が設けられている目的
障害者雇用納付金制度とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、法定雇用率を満たしていない事業主から納付金を徴収する制度です。制度の運営は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が行っています。
納付されたお金は、法定雇用率を上回って障害者を雇用している企業に支給される「障害者雇用調整金」や、職場環境の整備・設備の導入などを支援する各種助成金の財源として活用されています。
障害者を雇用する際には、職場環境の整備や設備の改善、支援担当者の配置など、企業によってはさまざまな費用がかかることがあります。
障害者雇用納付金制度は、こうした企業ごとの負担の差をできるだけ公平にし、障害者雇用を社会全体で支えていくことを目的としています。
法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、その財源を障害者雇用に積極的に取り組む企業へ還元することで、企業間の負担を調整するとともに、障害のある方が安心して働ける環境づくりを後押しする役割を担っています。
出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者雇用納付金制度の概要」
法定雇用率を達成していても申告が必要な場合がある
「法定雇用率を達成しているから申告は不要」と思われるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
障害者雇用納付金制度では、申告義務のある事業主は、納付額が0円となる場合でも、原則として申告を行う必要があります。つまり、納付金が発生する企業だけが申告する制度ではありません。
申告では、各月の常用雇用労働者数や雇用している障害者数などを、所定の申告書に記載します。また、法定雇用率を上回って障害者を雇用し、一定の要件を満たしている場合は、障害者雇用調整金の支給申請もあわせて行うことができます。
障害者雇用納付金は罰金ではない
「障害者雇用納付金」と聞くと、罰金やペナルティのような制度をイメージする方もいるかもしれません。しかし、障害者雇用納付金は、法定雇用率を達成できなかったことに対する罰金や制裁金ではありません。
この制度は、障害者を雇用する際に必要となる設備の整備や職場環境の改善など、企業ごとに異なる負担を調整することを目的としています。そのため、納付されたお金は、障害者雇用に積極的に取り組む企業への調整金や助成金などに活用されています。
なお、納付金を支払えば障害者を雇用しなくてもよいというわけではありません。事業主には、納付金の有無にかかわらず、法定雇用率の達成に向けて継続的に障害者雇用へ取り組むことが求められます。
障害者雇用納付金の対象企業を解説!
ここでは、どのような企業が障害者雇用納付金制度の対象になるのかをわかりやすく解説します。
常用労働者数100人超の企業が対象
障害者雇用納付金制度の対象となるかどうかは、資本金や売上高ではなく、常用雇用労働者数によって決まります。原則として、常用雇用労働者数が100人を超える事業主が申告の対象です。
具体的には、申告対象期間の各月のうち、常用雇用労働者数が100人を超える月が5か月以上ある場合、障害者雇用納付金の申告を行う必要があります。
ただし、対象となる企業すべてに納付金が発生するわけではありません。
法定雇用障害者数を満たしている場合は納付額が0円となることもあります。一方で、雇用している障害者数が法定雇用障害者数を下回っている場合は、その不足人数に応じて納付金を納める必要があります。
企業単位で常用雇用労働者数を判断する
常用雇用労働者数は、原則として事業所ごとではなく、事業主(企業)単位で判断します。そのため、本社だけでなく、支店や営業所、工場など複数の事業所がある場合は、それぞれの常用雇用労働者数を合算して計算します。
一方、親会社と子会社は別の法人として扱われるため、通常はそれぞれで常用雇用労働者数や障害者雇用率を判定します。ただし、特例子会社制度などの認定を受けている場合は、親会社や関係会社を含めた企業グループ全体で障害者雇用率を算定できるケースもあります。
「事業所ごとに100人を超えていないから対象外」と判断してしまうケースもあるため、自社全体の人数を基準に確認することが大切です。
障害者雇用納付金の対象外となる企業
常用雇用労働者数が100人以下の事業主は、原則として障害者雇用納付金の申告・納付の対象外です。
ただし、納付金制度の対象外であることと、障害者の雇用義務がないことは同じではありません。法定雇用率が適用される規模の企業は、納付金の対象外であっても障害者雇用に取り組む必要があります。
【早見表】障害者雇用納付金がいくらかわかる!
障害者雇用納付金は、法定雇用障害者数に対する不足1人につき月額5万円です。不足人数が1年間変わらない場合の納付金額は、次のとおりです。
不足人数ごとの障害者雇用納付金額
| 不足人数 | 1か月あたり | 年間の目安 |
| 1人 | 5万円 | 60万円 |
| 2人 | 10万円 | 120万円 |
| 3人 | 15万円 | 180万円 |
| 4人 | 20万円 | 240万円 |
| 5人 | 25万円 | 300万円 |
| 10人 | 50万円 | 600万円 |
年間の目安は、同じ人数が12か月間不足した場合の金額です。実際の納付額は、各月の法定雇用障害者数と雇用障害者数を基に算定するため、労働者数や障害者雇用数の変動によって異なります。
障害者雇用納付金は不足1人につき月額5万円
納付金の単価は、不足1人につき月額5万円です。たとえば、年度を通じて2人不足していれば、納付金の目安は「2人×5万円×12か月」で120万円となります。
ここでいう不足人数は、単純な在籍人数ではありません。法定雇用率に基づく法定雇用障害者数と、制度上の算定方法による雇用障害者数との差によって決まります。
障害者雇用納付金の計算方法をわかりやすく解説!
障害者雇用納付金は、各月の法定雇用障害者数と、実際に雇用している障害者数を年度単位で集計して計算します。算定期間は原則として4月1日から翌年3月31日までです。
納付金額を求める計算式
障害者雇用納付金の基本的な計算式は、次のとおりです。
納付金額=5万円×各月の法定雇用障害者数の年度合計と実雇用障害者数の年度合計との差
たとえば、毎月の法定雇用障害者数が3人、実雇用障害者数が2.5人で、その状態が12カ月続いた場合は「5万円×0.5人×12カ月=30万円」となります。
法定雇用障害者数の求め方
各月の法定雇用障害者数は、原則として次の式で計算します。
法定雇用障害者数=常用雇用労働者数×法定雇用率
計算結果に1人未満の端数がある場合は切り捨てます。民間企業の法定雇用率は2026年6月まで2.5%、2026年7月から2.7%です。年度の途中で雇用率が変わる場合は、各月に適用される雇用率で算定します。
除外率が設定されている業種では、除外率相当数を常用雇用労働者数から控除したうえで計算します。
常用雇用労働者数の数え方
常用雇用労働者とは、期間の定めなく雇用されている人や、1年を超えて継続して雇用される見込みの人などを指します。人数は週所定労働時間に応じて換算します。
週30時間以上働く労働者
週所定労働時間が30時間以上の常用雇用労働者は、1人を1人として数えます。正社員だけでなく、要件を満たす契約社員やパートタイマーも対象です。
週20時間以上30時間未満の短時間労働者
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者は、1人を0.5人として数えます。原則として週20時間未満の労働者は、常用雇用労働者数には含めません。
雇用している障害者数の数え方
実雇用障害者数は、障害の種類や程度、週所定労働時間に応じて換算します。身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などによる確認が必要です。
身体障害者と知的障害者の算定方法
重度以外の身体障害者と知的障害者は、週30時間以上の場合は1人、週20時間以上30時間未満の場合は0.5人として算定します。
精神障害者の算定方法
精神障害者は、週30時間以上の場合は1人として算定します。週20時間以上30時間未満の精神障害者についても、当分の間、1人を1人として算定する特例があります。
重度障害者と短時間労働者の算定方法
重度身体障害者と重度知的障害者は、週30時間以上の場合は1人を2人、週20時間以上30時間未満の場合は1人を1人として算定します。
また、週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者は、1人を0.5人として算定できます。ただし、これらの労働者は常用雇用労働者数には算入しません。
Q&A|障害者雇用納付金に関するよくある質問
法定雇用率を上回ると調整金や報奨金はもらえますか?
一定の要件を満たし、申請することで障害者雇用調整金や報奨金を受給できます。
常用雇用労働者が100人を超える事業主には障害者雇用調整金、100人以下の事業主には所定の基準を超えて障害者を雇用した場合に報奨金が支給されます。
いずれも自動的に支給されるものではありません。算定期間における雇用実績を確認し、期限内に申請する必要があります。
納付金を支払えば障害者雇用をしなくてよいですか?
障害者雇用納付金を支払っても、障害者雇用促進法に基づく雇用義務は免除されません。
納付金は罰金や雇用義務の代替ではなく、障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整するための制度です。
法定雇用率を達成していない企業は、行政指導や障害者雇入れ計画の作成命令などの対象になる場合があります。
常用雇用労働者がちょうど100人の場合は対象ですか?
常用雇用労働者がちょうど100人の月は、「100人を超える」に該当しないため、障害者雇用納付金の算定対象になりません。
ただし、申告対象期間中に常用雇用労働者が100人を超える月が合計5か月以上ある事業主は、納付金の申告対象です。従業員数が変動する企業は、各月の人数を確認する必要があります。
納付金は経費として計上できますか?
障害者雇用納付金は、会計上の費用として処理でき、法人税上も原則として損金に算入できます。
一般的には「租税公課」などの勘定科目を使用しますが、具体的な処理は企業の会計方針によって異なります。不明な場合は税理士や経理担当者に確認しましょう。
申告先と問い合わせ先はどこですか?
障害者雇用納付金の申告先は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構です。所定の申告書を使用する方法のほか、電子申告も利用できます。
制度や申告方法については、同機構の各都道府県支部に設置されている高齢・障害者業務課へ問い合わせられます。ハローワークへ提出する障害者雇用状況報告とは手続きが異なるため、提出先を間違えないよう注意が必要です。
まとめ
障害者雇用納付金は、常用雇用労働者が100人を超える事業主が法定雇用障害者数を下回った場合、原則として不足1人につき月額5万円を納付する制度です。納付金額は、各月の常用雇用労働者数から算出した法定雇用障害者数と、実際に雇用する障害者数との差を基に計算します。
対象かどうかは事業所単位ではなく企業単位で判断し、法定雇用率を達成していても申告が必要な場合があります。納付金は罰金ではなく、納付しても障害者雇用義務はなくなりません。算定区分を正しく確認し、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構へ期限内に申告しましょう。



