「せっかく採用した障がいのある社員が、すぐに辞めてしまう…」そんな悩みを抱えていませんか?
障害者雇用が定着しない背景には、実は企業側の課題が大きく影響しています。
本記事では、厚生労働省の調査データを基に、本人と企業の双方から見た離職理由を徹底分析します。結論として、定着しない根本原因は「採用時のミスマッチ」と「入社後のフォロー体制の不備」にあり、企業が主体的に対策を講じることで定着率は大きく改善できます。明日から実践できる具体的な解決策まで詳しく解説しますので、ぜひご一読ください。
この記事を読むと分かること
- 障害者雇用が定着しないのは、どんな理由がある?
- 障害種別によって、離職しやすい原因にはどんな違いがある?
- 障害者雇用の定着率を高めるには、企業はどんな対策を行うべき?
障害者雇用が定着しない理由は?厚労省の調査から読み解く
障害者雇用促進法の改正により、企業で働く障がいのある方は年々増加しています。しかしその一方で、採用後に早期離職してしまうケースが後を絶たず、人材の定着は多くの企業にとって大きな課題となっています。
なぜ障害者雇用は定着が難しいのでしょうか。まずは厚生労働省の調査結果をもとに、離職に至る理由を「本人側」「企業側」「障害種別」の3つの視点から見ていきましょう。
本人側の離職理由トップ5
障がいのある方が仕事を辞める理由は、決して障害そのものだけではありません。厚生労働省所管の障害者職業総合センターの調査によると、障がいのある方が離職を決意した主な理由は以下の通りです。
- 業務の遂行に問題があるため
2. 労働条件があわないため
3. 職場の人間関係のため
4. 将来への不安のため
5. キャリアアップのため
特に「職場の人間関係」は、これは障害の有無にかかわらず多くの人が抱える悩みです。しかし、障害特性によるコミュニケーションの難しさから孤立感を深めたり、周囲の無理解から働きづらさを感じたりするケースも少なくありません。
また、自身の能力や特性に合わない業務を任されることでのミスマッチや、必要な配慮が得られないことが、結果的に症状の悪化につながり離職に至るという悪循環も見られます。
参考:https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/chukanhoukoku.html
(障害者職業総合センターNIVRより)
企業側の受け入れ課題
一方で、障がいのある方を雇用する企業側も様々な課題を抱えています。障害者雇用が定着しない背景には、受け入れ体制が十分に整っていないという現実があります。
企業が感じる主な課題としては、「本人に合う仕事内容を切り出すのが難しい」「受け入れ部署の社員の理解が進まない」「コミュニケーションの取り方がわからない」「安全面の配慮が難しい」といった点が挙げられます。
これらの課題を解決できないまま採用を進めてしまうと、入社後のフォローが不十分になり、結果的に本人の孤立や不安を招き、早期離職の原因となってしまいます。
障害種別で異なる定着しない理由
一口に「障害」といっても、その特性や必要とする配慮は一人ひとり異なります。定着しない理由も障害種別によって傾向が見られます。
ここでは代表的な4つの障害種別における離職理由を見ていきましょう。
精神障がい者の離職理由
精神障害のある方は、環境の変化やストレスに敏感な場合があります。そのため、離職理由として「職場の人間関係によるストレス」や「業務上のプレッシャーによる症状の悪化」が多く挙げられます。
相談できる相手がいない、業務量が調整されないといった環境が、心身の不調に直結しやすいのが特徴です。
発達障がい者の離職理由
発達障害のある方は、コミュニケーションのすれ違いや、特性に合わない業務内容が離職の引き金になりやすい傾向があります。例えば、「指示が曖昧で理解できない」「複数の作業を同時に行うマルチタスクが苦手」「職場の雑音や光が気になり集中できない(感覚過敏)」といった困難さを抱えることがあります。
本人の「努力不足」ではなく、特性への理解と配慮不足が原因であることが多いです。
身体障がい者の離職理由
身体障害のある方の場合、物理的な環境や体調への配慮が離職の大きな要因となります。具体的には、「職場のバリアフリー設備が不十分」「通勤への負担が大きい」「業務内容が体力的に厳しい」「通院のための休暇が取りづらい」といった理由です。
業務遂行能力はあっても、物理的な環境や労働条件が合わずに働き続けることが困難になるケースが見られます。
知的障がい者の離職理由
知的障害のある方は、仕事の覚え方や人間関係の築き方に特有の困難さを抱えることがあります。離職理由としては、「作業指示が複雑で覚えられない」「指導してくれる人が頻繁に変わる」「職場で孤立してしまう」といった点が挙げられます。
図や写真を使ったわかりやすいマニュアルの整備や、同じ担当者が繰り返し丁寧に教えるといった継続的なサポート体制が定着の鍵となります。
障害者雇用が定着しない企業に共通する3つの問題点
障がいのある方の離職は、本人の希望や特性だけが原因ではありません。実は、受け入れ側である企業に共通する問題点が、定着を妨げているケースが数多く存在します。
ここでは、障害者雇用がうまくいかない企業に見られがちな3つの大きな問題点を具体的に解説します。
採用段階でのミスマッチ
障害者雇用の定着を妨げる最初の壁は、採用段階でのミスマッチです。法定雇用率の達成を急ぐあまり、企業側が候補者の障害特性や能力、希望する業務内容を十分に理解しないまま採用を進めてしまうことがあります。また、求職者側も自身の苦手なことや必要な配慮を伝えきれず、企業文化や業務の実態を把握しないまま入社を決めてしまうケースも少なくありません。
その結果、入社後に「任せられる仕事がない」「業務内容が本人の特性に合っていない」「必要な配慮が得られない」といったギャップが生じ、早期離職の直接的な原因となります。
採用はゴールではなくスタートであるという認識のもと、選考過程で業務内容や配慮事項について丁寧なすり合わせを行うことが不可欠です。
入社後のフォロー体制の不備
採用後のフォロー体制が整っていないことも、定着を阻む大きな要因です。障がいのある社員を配属した後は現場任せにしてしまい、人事部や管理者が関与しないままでは、問題が起きても表面化しにくくなります。特に、困ったことや不安なことがあっても「誰に相談すればよいかわからない」という状況は、本人を孤立させ、精神的な負担を増大させます。
定期的な面談の機会がなかったり、相談窓口が機能していなかったりすると、本人は小さなつまずきを解消できないまま、次第にモチベーションを失ってしまいます。
業務の進捗確認だけでなく、体調や人間関係、職場環境への適応状況などを気にかける継続的なサポート体制を構築することが、安心して働き続けられる基盤となります。
職場でのコミュニケーション不足
職場におけるコミュニケーションの問題も、離職につながる深刻な課題です。管理職や同僚が障害特性について十分な知識や理解を持っていない場合、「どう接したらよいかわからない」という戸惑いから、必要なコミュニケーションを避けてしまうことがあります。その結果、本人は孤立感を深め、職場に居場所がないと感じてしまいます。
また、指示の出し方が曖昧であったり、本人の特性に合わない方法であったりすると、業務が円滑に進みません。障がいの有無にかかわらず、良好な人間関係は働く上での重要な要素です。
障害に関する正しい知識を社内で共有し、管理職だけでなく、共に働く従業員一人ひとりが適切なコミュニケーションを取れるよう、研修の機会を設けるなどの取り組みが求められます。
障害者雇用の定着率を高めるための具体的な企業の対策!
障がいのある社員が安心して長く働き続けるためには、企業の積極的な取り組みが不可欠です。前章で挙げた問題点を踏まえ、
ここでは定着率を高めるための5つの具体的な対策を詳しく解説します。
① 採用プロセスを見直し相互理解を深める
定着の第一歩は、採用段階でのミスマッチを防ぐことです。会社の戦力として活躍してもらうという視点が重要になります。求人票には、担当する業務内容や範囲、必要なスキルを具体的に明記しましょう。
また、面接の場では、企業側が提供できる配慮や職場環境について正直に伝え、応募者からは障害特性や希望する配慮、キャリアプランなどを丁寧にヒアリングすることが求められます。
可能であれば、職場見学や数日間の就業体験(インターンシップ)の機会を設けることで、入社後のイメージギャップを減らし、双方が納得した上での採用に繋がります。
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② 業務の切り出しと特性に合ったマニュアル作成
「任せる仕事がない」という課題は、既存の業務を細分化する「業務の切り出し」によって解決できる場合があります。
例えば、営業担当者が行っている資料作成やデータ入力、伝票整理といった業務を切り出し、障がいのある社員の専任業務とすることで、組織全体の生産性向上にも貢献します。その際、本人の障害特性や得意なこと、苦手なことを考慮して業務を割り当てることが大切です。
また、業務手順は誰が見ても理解できるよう、写真や図、イラストを多用したマニュアルを作成しましょう。曖昧な表現を避け、具体的な作業手順を一つひとつ示すことで、不安なく業務に取り組むことができます。
③ 相談しやすい環境とメンター制度の導入
入社後の孤立を防ぎ、早期に職場に馴染んでもらうためには、手厚いフォロー体制が欠かせません。業務上の指導役とは別に、年齢の近い先輩社員などが精神的なサポートを行う「メンター制度(ブラザー・シスター制度)」の導入はとても有効です。
業務のことからプライベートの悩みまで、気軽に相談できる相手がいることは、大きな安心感に繋がります。また、上司や人事担当者との定期的な1on1ミーティングを設定し、業務の進捗状況や体調、困っていることなどを話す機会を設けましょう。
問題を一人で抱え込ませず、会社としてサポートする姿勢を明確にすることが、信頼関係の構築と長期的な定着に繋がります。
④ 合理的配慮の提供と継続的な環境改善
障害者雇用促進法で定められている「合理的配慮」の提供は、企業の義務です。しかし、画一的な対応ではなく、本人との対話を通じて、本当に必要な配慮を見極めることが重要です。
例えば、車椅子利用者のためのスロープ設置やデスクの高さ調整、視覚障害のある社員への音声読み上げソフトの導入、聴覚障害のある社員との筆談やチャットツールの活用、精神・発達障害のある社員へのパーテーション設置や静かな場所での休憩許可などが挙げられます。
一度配慮を提供して終わりではなく、本人の状況や業務内容の変化に応じて、定期的に配慮内容を見直し、職場環境を継続的に改善していく姿勢が求められます。
⑤ 外部の専門機関との連携を強化する
障害者雇用に関するノウハウが社内に不足している場合、自社だけで課題を抱え込む必要はありません。ハローワークはもちろん、各地域に設置されている「地域障害者職業センター」や「障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)」といった公的な専門機関と連携することで、採用から職場定着まで一貫したサポートを受けることができます。
これらの機関は、障害特性に関する専門的なアドバイスや、従業員向けの研修プログラムの提供、本人と企業の橋渡し役など、多岐にわたる支援を行っています。
16年のノウハウで企業をサポート|障害者雇用支援の「ファーマーズマーケット」
外部機関との連携の一例として、民間企業が提供する障害者雇用支援サービスを活用する方法もあります。
例えば「ファーマーズマーケット」のようなサービスは、長年の支援実績で培ったノウハウを活かし、企業の障害者雇用をトータルでサポートしています。初めて障害者雇用に取り組む企業や、定着率に伸び悩んでいる企業にとって、心強いパートナーとなるでしょう。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
障害者雇用が定着しない主な理由は、採用時のミスマッチや入社後のフォロー不足、職場内のコミュニケーション不足といった、企業側の受け入れ体制に起因することが少なくありません。障がいのある方の離職理由は多様ですが、その背景には個々の特性への理解不足が隠れている場合があります。
定着率を高めるためには、採用段階での相互理解を深め、特性に合った業務の切り出しや継続的な合理的配慮、相談しやすい環境づくりが不可欠です。外部の専門機関なども活用しながら組織全体で支援体制を構築することが、障がいのある社員の活躍と企業の成長に繋がります。



