法定雇用率の引き上げに対応したいものの、オフィス内での業務の切り出しや合理的配慮の整備に課題を感じていませんか?
この記事では、企業が農業を活用して障害者雇用を行うメリットや、農園型雇用をめぐる国の見解、導入時に知っておきたい課題と対策、費用の目安まで分かりやすく解説します。
自社に合った障害者雇用の進め方を検討したい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読むと分かること
- 農業で障害者雇用を行うメリットは?
- 導入時の課題や対策は?
- 農園型障害者雇用の費用はどのくらい?
農福連携とは?農業と障害者雇用が注目される理由をわかりやすく解説
近年、メディアや政府の発表などで「農福連携(のうふくれんけい)」という言葉を耳にする機会が増えています。農福連携とは、農業分野と福祉分野が互いの課題を解決するために連携する取り組みのことです。
なぜ今、農業と障害者雇用がこれほど注目されているのか、その基本的な仕組みと背景を解説します。
農業と福祉をつなぐ!農福連携の基本的な仕組み
農福連携とは、農業と福祉が連携し、障がいのある方が農業分野で活躍できる仕組みです。農福連携には、大きく分けて2つの形態があります。
1つ目は、福祉事業所が農業に取り組む、または農家から作業を受託する形態です。就労継続支援事業所などが自ら農作物を栽培したり、地域の農家から作業を請け負ったりすることで、障がいのある方の就労機会を創出します。
2つ目は、一般企業が障がい者を直接雇用し、農園で働いてもらう形態です。企業が自社で農園を運営するほか、農園サービスを提供する事業者の設備を利用するケースもあります。専任スタッフのサポートを受けながら就労できるため、企業側も比較的導入しやすいのが特徴です。
近年、企業の障害者雇用の新たな選択肢として特に注目されているのが、この「企業による直接雇用型の農福連携」です。法定雇用率への対応と安定した雇用創出を両立できる手法として、多くの企業が導入を進めています。
法定雇用率の引き上げで企業の導入が進んでいる
企業が農業分野での障害者雇用に注目する背景には、障害者法定雇用率の引き上げがあります。
障害者雇用促進法に基づき、民間企業に求められる法定雇用率は、2024年4月に2.5%へ引き上げられました。さらに2026年7月には2.7%へ引き上げられることが決まっており、対象となる企業の範囲も今後さらに広がる予定です。
こうした中、多くの企業が障害者雇用に取り組んでいますが、採用競争の激化や、自社に適した業務を見つける難しさに悩むケースも少なくありません。特にオフィスワーク中心の企業では、「どのような仕事を任せればよいのか分からない」「受け入れ体制の整備が難しい」といった課題を抱えることもあります。
そこで近年注目されているのが、農業を活用した障害者雇用です。農業には工程ごとにさまざまな作業があるため、一人ひとりの特性に合わせて業務を切り出しやすく、安定した就労につながりやすい特徴があります。そのため、オフィス以外の新たな活躍の場として、農福連携を導入する企業が増えています。
農業で障害者雇用を行う企業が得られる3大メリット
農業分野での障害者雇用を導入することで、企業は従来のオフィス雇用では得られなかった多くのメリットを受けられます。
ここでは、企業が得られる3つの大きなメリットを詳しく解説します。
① オフィスの環境整備や合理的配慮への負担を軽減できる
障害者雇用促進法に基づき、企業には障がい者に対する「合理的配慮」の提供が義務付けられています。
一般的なオフィスで障がい者を雇用する場合、車椅子用スロープの設置や多目的トイレの整備、パーテーションによる個室化など、物理的なバリアフリー化や環境整備に多額のコストと時間がかかることがあります。
一方で、障害者雇用支援サービスが提供する専用の農園などを活用する場合、施設内は最初からバリアフリー設計が施されているケースがほとんどです。車椅子でも作業しやすい高床式の栽培台や、休憩スペース、冷暖房完備のハウスなど、障がい者が安全かつ快適に働ける環境があらかじめ整っています。
そのため、自社オフィスを改修するための初期投資や、個別の合理的配慮にかかる社内リソースの負担を大幅に軽減することが可能です。
② 新たな業務の切り出しを行わずに雇用を実現しやすい
オフィスワークにおいて、障がい者の特性や能力にマッチした「業務の切り出し」を行うことは、多くの人事担当者が頭を悩ませるポイントです。データ入力や書類整理などの定型業務は、ペーパーレス化やDXの進展に伴い、社内で減少傾向にあります。無理に業務を作り出そうとすると、既存社員の負担増につながることもあります。
これに対し、農業における作業は、種まき、水やり、雑草取り、収穫、袋詰めなど、工程が明確にマニュアル化しやすい特徴があります。個々の障害特性(知的障害、精神障害、身体障害など)に合わせて作業を細分化しやすいため、無理に新しい事務作業を作り出す必要がありません。
安定した農作業という職域があらかじめ存在しているため、ミスマッチが少なく、やりがいを感じられ、長期的な定着雇用を実現しやすいという強みがあります。
③ 社会貢献活動を通じて企業イメージの向上につながる
農業での障害者雇用は、単なる法定雇用率の達成にとどまらず、企業の社会的責任を果たす有力な手段となります。
近年、多くの企業がSDGsの達成やESG(環境・社会・ガバナンス)経営を重視しており、多様な人材が活躍できる社会づくりへの貢献が求められています。
障がい者が農業を通じて生産活動に携わることは、就労機会の創出だけでなく、日本の農業分野における担い手不足や耕作放棄地といった地域課題の解決にも寄与します。
また、収穫した安心・安全な野菜を自社の社員食堂で提供したり、福利厚生として社員に配布したり、近隣の福祉施設へ寄付したりすることで、社内外に対して積極的な社会貢献姿勢をアピールできます。これにより、企業のブランドイメージや信頼性が大きく向上します。
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農業での障害者雇用における課題と対策とは
農業を活用した障害者雇用、特に「農園型」と呼ばれる雇用モデルは、企業にとって導入のハードルが低い一方で、特有の課題も存在します。
導入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、想定される課題と具体的な対策をあらかじめ把握しておくことが重要です。
社内に障害者雇用のノウハウが蓄積されにくい
外部の障害者雇用支援事業者が運営する農園を利用する場合は、現地のサポートスタッフが日々の業務指導や体調管理を行うため、企業側の負担を大きく軽減できます。一方で、障がいのある社員と自社が直接関わる機会が少なくなり、障害者雇用に関する知識やノウハウが社内に蓄積されにくいという課題もあります。
こうした課題を防ぐためには、支援事業者に任せきりにするのではなく、企業側も積極的に関わることが大切です。例えば、人事担当者が定期的に農園を訪問したり、オンライン面談を実施したりすることで、働く様子や困りごとを把握しやすくなります。また、日報や活動報告を活用して業務状況や体調の変化を共有する仕組みを整えることも効果的です。
継続的なコミュニケーションを通じて社内に知見を蓄積できれば、将来的な障害者雇用の拡大や、他部署での受け入れにも活かしやすくなります。
制度変更の可能性はある?農園型障害者雇用を巡る国の見解
農園での障害者雇用の運用のあり方については、厚生労働省の労働政策審議会などで継続的に議論が行われています。主な論点として挙げられているのが、「企業と障がい者との関係性が十分に築かれているか」「障害者雇用の本来の目的である職業的自立や社会参加につながっているか」といった点です。
現時点では、農園型障害者雇用そのものが問題視されているわけではなく、適切に運営されていれば法令上も認められています。しかし、国は雇用率の達成だけでなく「雇用の質」の向上も重視しており、今後制度やガイドラインが見直される可能性はあります。
そのため導入を検討する際は、目先の法定雇用率への対応だけでなく、障がいのある社員が長く活躍できる環境づくりや、企業とのつながりを意識した運用を行うことが大切です。
Q&A|農業における障害者雇用に関するよくある質問
農業分野での障害者雇用、特に「農園型障害者雇用」を検討する企業から、よく寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。導入前の疑問を解消し、スムーズな検討にお役立てください。
農園型障害者雇用の導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
自社で農地を確保し、ビニールハウスや農具などの設備をゼロから整備する場合、数百万円から数千万円規模の初期投資が必要になることがあります。
一方、障害者雇用支援事業者が運営する貸し農園(サテライトオフィス型農園)を利用する場合は、初期費用として数十万〜数百万円、月額の農園利用料やサポート費として障害者1名あたり数万〜十数万円程度が一般的な相場です。
これに加えて、雇用する障がい者や管理者の人件費(最低賃金以上)が発生します。助成金制度を活用することで、費用負担を軽減することも可能です。
収穫した農作物はどのように活用されるのですか?
代表的な活用方法としては、福利厚生の一環として自社の従業員へ無料配布または社内販売する、社員食堂の食材として利用する、取引先や顧客へのノベルティ(贈答品)として配布してSDGsやCSR活動をアピールする、地域の福祉施設や子ども食堂へ寄付して地域社会へ貢献する、などが挙げられます。
これらは社内コミュニケーションの活性化や、企業イメージの向上に大きく寄与します。
初期費用、設備投資0円|障害者雇用支援の「ファーマーズマーケット」の強み
ファーマーズマーケットの大きな強みは、初期費用や設備投資をかけることなく農業型障害者雇用を始められる点です。
一般的な農園型サービスでは農地や設備の準備に多額の費用が発生する場合がありますが、ファーマーズマーケットでは必要な設備を自社で保有しているため、企業は初期投資なしで導入できます。
さらに、採用前の実習制度を設けることでミスマッチを防ぎ、最短3週間での採用も可能です。加えて、障がい者が生産した野菜は実際に販売され、その収益が還元される「食べる社会貢献」の仕組みを採用しています。
単に雇用率を達成するだけでなく、農業事業としての価値創出にもつながるため、企業・従業員・地域社会の三者にメリットのある障害者雇用を実現できる点が特徴です。
障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
農業における障害者雇用(農福連携)は、法定雇用率の達成に悩む企業にとって、オフィス環境の整備や業務切り出しの負担を大幅に軽減できる画期的な解決策です。また、社会貢献活動を通じた企業イメージ向上という大きなメリットも得られます。
一方で、社内ノウハウの蓄積や制度変更への対応といった課題も存在するため、専門の雇用支援サービスを上手に活用することが、持続可能で確実な障害者雇用の実現に向けた最善の結論と言えます。メリットと課題を正しく理解し、自社に最適な形で導入を進めましょう。



