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障がい者雇用で事業主が果たすべき責任の全て|合理的配慮からトラブル対応まで解説

障がい者雇用 事業主 責任

障がい者雇用における事業主の責任について、具体的に何をすべきか、どこまで対応すればよいのかお悩みではありませんか?

本記事では、障害者雇用促進法が定める「法定雇用率の達成」「差別の禁止」「合理的配慮の提供」という3つの法的義務を基礎から分かりやすく解説します。さらに、活用できる助成金や公的な相談窓口も紹介しており、この記事を読めば、安心して障がい者雇用を推進するための知識が得られます。

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目次

障がい者雇用における事業主の責任とは?法律に基づく3つの義務

障がい者雇用を推進する上で、事業主には「障がい者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)に基づき、大きく分けて3つの法的義務が課せられています。

これらは、障がいのある人が能力を最大限に発揮し、いきいきと働ける社会を実現するための重要な責任です。

ここでは、事業主が必ず押さえておくべき3つの義務について、その内容を詳しく解説します。

法的義務① 法定雇用率の達成

事業主の最も基本的な責任が、常時雇用する労働者の数に対して、一定割合以上の障がい者を雇用することです。これを「法定雇用率制度」と呼びます。

2024年4月1日より、民間企業における法定雇用率は2.5%に引き上げられました。この法定雇用率は、今後も段階的に引き上げられる予定です。

自社の対象労働者数と障がい者雇用人数の計算方法

法定雇用率の対象となる「常時雇用する労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上の社員を指します。まずは自社の該当する労働者数を把握し、その人数に法定雇用率(2.5%)を掛けることで、必要な障がい者の雇用人数を算出できます。

たとえば、常時雇用する労働者が200人いる場合は、200人 × 2.5%で5人の雇用が必要となります。

なお、障がい者のカウント方法は一律ではなく、障がいの種類や程度、労働時間によって異なります。たとえば、重度の身体障がい者や知的障がい者は1人を2人としてカウントされます。また、週20時間以上30時間未満の短時間労働者は、1人を0.5人として計算されます。

雇用率未達成の場合に課される罰金?障害者雇用納付金制度

法定雇用率を達成できなかった場合、罰金ではなく「障害者雇用納付金」を納める義務が生じます。これは、障がい者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整するための制度です。

常時雇用する労働者数が101人以上の企業が対象となり、法定雇用率に満たない障がい者1人につき月額50,000円を納付する必要があります。この納付金は、法定雇用率を達成している企業への調整金や、障がい者雇用に関する助成金の原資として活用されます。

法的義務② 障がいを理由とする差別の禁止

障害者雇用促進法では、障がいがあることを理由に、労働者を不当に差別することを禁止しています。この「差別の禁止」は、募集・採用から雇用後の待遇まで、雇用のあらゆる段階に適用される重要な義務です。

募集や採用における均等な機会の確保

事業主は、求人の募集や採用選考において、障がい者に対して均等な機会を提供しなければなりません。具体的には、障がいがあるという理由だけで応募を拒否したり、採用試験の合格基準を一方的に厳しくしたり、採用から排除したりすることは禁止されています。

採用の判断は、あくまで本人の能力や適性が、求める職務内容に合致するかどうかで行う必要があります。

賃金や教育訓練など雇用後の待遇における差別禁止

採用後においても、障がいを理由とした差別は許されません。賃金の決定、昇進・昇格、業務の配置、福利厚生、教育訓練の機会など、あらゆる待遇において、障がいがない従業員と不利益な差を設けることは禁止されています。

例えば、「障がいがあるから」という理由だけで、他の従業員より低い賃金を設定したり、研修への参加を認めなかったりすることは、法に抵触する行為となります。

法的義務③ 合理的配慮の提供

事業主には、障がいのある従業員が職場で働く上での支障(バリア)を取り除くための、個別的な配慮を提供する義務があります。これを「合理的配慮の提供」と呼びます。

この義務は、障がいのある人とない人が等しく能力を発揮できる職場環境を作るために不可欠です。

合理的配慮とは?具体的な定義と範囲

合理的配慮とは、障がいのある従業員から何らかの配慮を求める意思表明があった場合に、その人の状況に応じて必要な変更や調整を行うことです。ただし、その配慮が事業主にとって「過重な負担」となる場合は、この義務の対象外となります。

過重な負担であるかどうかは、事業規模、財務状況、配慮にかかる費用などを総合的に考慮して判断されます。具体的な配慮としては、職場の段差をなくすスロープの設置、パソコンの文字を読み上げるソフトの導入、業務内容や指示方法の調整などが挙げられます。

障がい種別ごとに必要な合理的配慮|事業主が提供すべき具体例

合理的配慮は、障がいの特性や本人の状況によって必要な内容が異なります。事業主は、従業員本人と対話を重ね、何に困難を感じ、どのような支援が必要なのかを具体的に把握することが重要です。

ここでは、障がいの種別ごとに求められる配慮の具体例を紹介します。

身体障害のある従業員への配慮例

身体障害は、身体の動きに障がいのある方、視覚障害、聴覚障害、内部障害など多岐にわたります。それぞれの特性に応じて、物理的な環境整備や業務遂行上の工夫が求められます。

例えば、車椅子を利用する従業員に対しては、スロープや手すりの設置、エレベーターの確保、多目的トイレの整備、机や作業台の高さ調整といった物理的なバリアフリー化が考えられます。また、通勤ラッシュを避けるための時差出勤やテレワークの導入も有効な配慮です。

視覚障害のある従業員には、音声読み上げソフトの導入や拡大鏡の用意、書類のテキストデータ化、移動経路の安全確保などが必要です。聴覚障害のある従業員に対しては、筆談やチャットツールでのコミュニケーション、必要に応じた手話通訳者の配置、会議内容の文字起こしなどが配慮として挙げられます。

精神障害・発達障害のある従業員への配慮例

精神障害(うつ病、統合失調症など)や発達障害(ASD、ADHDなど)のある方は、ストレス管理やコミュニケーション、マルチタスクなどに困難を抱える場合があります。そのため、業務の進め方や職場環境への配慮が定着の鍵となります。

業務指示においては、口頭だけでなく文書や図解を用いたマニュアルを作成し、指示は一度に一つずつ出すなどの工夫が効果的です。業務の優先順位を明確にし、タスクリストを活用することで、本人が混乱せず業務に取り組めるよう支援します。また、定期的な面談を実施し、業務量や心身の状況を確認することも重要です。

環境面では、感覚過敏に配慮してパーテーションで区切られた静かな座席を用意したり、本人の体調に合わせて休憩を取りやすくしたりする配慮が考えられます。通院のための休暇取得や、フレックスタイム、短時間勤務制度の柔軟な適用も、安定した就労につながります。

知的障害のある従業員への配慮例

知的障害のある方は、抽象的な概念の理解や複雑な作業、臨機応変な対応が苦手な場合があります。業務内容を具体的に、そして分かりやすく伝える工夫が求められます。

業務内容を単純な工程に分解し、一つずつ覚えてもらう「スモールステップ」方式が有効です。作業手順を写真やイラストで示したマニュアルを作成し、常に確認できるようにしておくと、本人が安心して業務に取り組めます。また、見本を近くに置く、作業に使う道具の色分けをするといった視覚的な支援も理解を助けます。

指導体制としては、特定の教育係(メンター)を決め、一貫性のある指導を繰り返し行うことが大切です。できたことを具体的に褒めて本人の自信を育むとともに、困ったときにすぐに質問できるような、安心感のある職場環境を整えることが、長期的な定着に不可欠です。

【段階別】障がい者雇用における事業主の責任と対応ポイント

障がい者雇用は、採用して終わりではありません。事業主には、募集・採用から採用後の定着、そして万が一のトラブル発生時まで、それぞれの段階で果たすべき責任があります。

ここでは、障がいのある従業員が安心して長く働き続けられる職場環境を構築するために、事業主が押さえておくべき対応ポイントを時系列で詳しく解説します。

「募集・採用」段階での責任と注意点

障がい者雇用の第一歩は、募集・採用段階から始まります。この段階で最も重要なのは、障害者差別解消法で定められた「障がいを理由とする差別の禁止」を遵守し、全ての求職者に均等な機会を提供することです。

意図せず差別的な対応とならないよう、具体的な注意点を理解しておきましょう。

求人内容の適切な記載方法

求人票は、障がいのある方が応募を検討する際の重要な情報源です。業務内容や労働条件を明確かつ具体的に記載する責任があります。「簡単な事務作業」のような曖昧な表現は避け、「Wordを使用した議事録作成」「Excelのフォーマットへのデータ入力」など、求めるスキルや業務内容を具体的に示しましょう。

また、「車椅子での勤務に対応」「通院のための休暇取得に配慮」など、提供できる合理的配慮の例を記載することで、求職者は安心して応募しやすくなります。

採用面接で聞いてはいけないこと

採用面接では、応募者の適性や能力を判断するために必要な質問に留めるのが原則です。障がいの原因や症状、障がい者手帳の等級、通院歴といった、本人の職務遂行能力と直接関係のないプライベートな情報を質問することは、就職差別につながる可能性があるため避けなければなりません。

業務上必要な配慮を確認したい場合は、「この業務を行う上で、何か配慮が必要なことはありますか?」といった形で、本人から申し出てもらう形式で質問することが適切です。あくまでも、業務を遂行できるかどうかが判断基準であることを忘れてはいけません。

「採用後の定着支援」で果たすべき責任

障がいのある従業員を採用した後は、その能力を最大限に発揮し、職場に定着できるようサポートすることが事業主の重要な責任です。

職場環境の整備や、社内での理解促進に継続的に取り組むことで、誰もが働きやすい組織文化を醸成することができます。

障害者職業生活相談員の選任義務

障害者雇用促進法では、一定の条件を満たす事業主に対し、「障害者職業生活相談員」の選任を義務付けています。具体的には、障がいのある従業員を5人以上雇用している事業所が対象です。

相談員は、障がいのある従業員の職業生活全般に関する相談や指導を行い、職場定着を支援する重要な役割を担います。社内の従業員から選任し、必要な資格取得や研修受講をサポートすることが求められます。

受け入れ部署の環境整備と社内理解の促進

従業員の定着には、配属先の部署における環境整備が不可欠です。スロープの設置や机の高さ調整といった物理的な環境整備はもちろん、業務マニュアルの図解化や、指示を一つずつ出すといったコミュニケーション方法の工夫など、障がい特性に応じたソフト面の配慮も重要です。

また、受け入れ部署の管理職や同僚だけでなく、全社的に障がいへの理解を深めるための研修会などを実施し、組織全体でサポートする体制を構築することが、長期的な定着につながります。

「トラブル発生時」の対応責任と解決プロセス

障がい者雇用を進める中で、業務上の課題や人間関係のトラブルが発生することもあります。そうした際に、問題を放置せず、誠実に対応することも事業主の責任です。

迅速かつ適切な対応が、問題の深刻化を防ぎ、信頼関係を維持する鍵となります。

問題の早期発見と事実確認

トラブル対応の第一歩は、問題を早期に発見することです。定期的な面談の機会を設け、本人が困っていることや不安に感じていることを気軽に話せる関係性を築いておきましょう。

実際に問題が発生した際は、一方の意見だけで判断せず、まずは本人や関係者から丁寧に話を聞き、客観的な事実確認を徹底することが重要です。感情的な対立を避け、冷静に状況を把握することに努めてください。

本人・関係部署・支援機関との連携

問題解決を社内だけで抱え込む必要はありません。まずは本人の意向を尊重しながら、上司や人事部などの関係部署と連携し、解決策を検討します。

社内での解決が難しい場合は、ハローワークや地域障害者職業センター、本人が利用している就労支援機関といった外部の専門機関に相談することも有効です。第三者の客観的な視点や専門的な知見を取り入れることで、円満な解決への道筋が見えやすくなります。

一人で悩まないで!障がい者雇用で事業主の責任をサポートする制度と相談窓口

障がい者雇用における事業主の責任は多岐にわたりますが、そのすべてを一人で抱え込む必要はありません。国や地域の機関は、事業主が障がい者雇用を円滑に進められるよう、様々な支援制度や相談窓口を用意しています。

ここでは、事業主が活用できる代表的な制度と相談先をご紹介します。

事業主が活用できる!助成金制度を2つ紹介

障がい者を雇用する際には、施設の改修や専門スタッフの配置など、経済的な負担が伴う場合があります。こうした負担を軽減し、雇用を促進するために、国は様々な助成金制度を設けています。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、障がい者や高齢者といった就職が特に困難な方を、ハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して支給される助成金です。

対象となる労働者の障がいの種類や程度、週の所定労働時間、企業規模などに応じて助成額が異なります。障がい者雇用の初期コストを補い、安定した雇用を後押しする重要な制度です。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、職業経験の不足などから常用雇用への移行が難しい求職者を、原則3ヶ月間の試行雇用(トライアル雇用)を通じて、その適性や能力を見極め、常用雇用への移行を目的とする制度です。

特に、精神障がい者などを対象としたコースも設けられています。事業主はミスマッチを防ぎながら人材を見極めることができ、障がいのある方も業務や職場環境に慣れる期間が確保できるため、双方にとってメリットの大きい制度です。

困ったときに相談できる公的機関

障がい者雇用に関する疑問や課題が生じた際に、専門的なアドバイスやサポートを受けられる公的機関が存在します。採用計画から定着支援まで、あらゆる段階で頼りになる相談窓口です。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)には、障がい者雇用を専門に担当する窓口が設置されています。求人の申込み方法から、採用に関する具体的な相談、各種助成金の申請手続きまで、障がい者雇用に関する幅広いサポートを提供しています。

事業主にとって最も身近で利用しやすい相談窓口の一つです。

地域障害者職業センター

各都道府県に設置されている地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する専門機関です。事業主に対して、障がい者の雇用管理に関する専門的な助言や、職場適応を支援するジョブコーチの派遣、合理的配慮の提供に関する具体的なコンサルティングなど、より専門的で個別性の高い支援を行っています。

採用後の定着支援で課題を抱えた際に特に頼りになる存在です。

企業と障がい者をつなぐ!農業型障害者雇用支援の魅力

近年、障がい者雇用の新しい形として、農業分野を活用した雇用支援サービスが注目されています。これは、企業が雇用した障がいのある従業員に、サービス事業者が運営する農園で働いてもらう仕組みです。

企業側は、障がい者雇用のノウハウがなくても専門的なサポートを受けながら雇用を進められ、法定雇用率の達成にも繋がります。一方、障がいのある従業員は、自然に囲まれた落ち着いた環境で、それぞれのペースに合わせた業務に従事できるというメリットがあります。

「ファーマーズマーケット」では、一人ひとりの得意な力を生かせる農業の仕事づくりを進めています。実際に定着率は95%と高く、安心して長く働ける環境が整っています。

障害者雇用の進め方に迷ったときにはぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

障がい者雇用において事業主が果たすべき責任は、法定雇用率の達成、差別の禁止、合理的配慮の提供という3つの法的義務が根幹です。これらは単なる法律遵守に留まらず、障がいのある方が能力を最大限に発揮できる職場環境を整えるために不可欠です。

募集・採用から定着支援まで、各段階で適切な対応が求められますが、助成金やハローワーク等の公的機関を積極的に活用することで負担を軽減できます。

これらの責任を果たすことは、多様性のある組織づくりを推進し、企業の持続的な成長に繋がる重要な取り組みと言えるでしょう。

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