「障害者雇用の給与は一般雇用より安い」と聞いて、不安に感じていませんか?
この記事では、厚生労働省の公的なデータをもとに、障害者雇用のリアルな給与相場を徹底解説します。さらに、現状から収入を上げるための具体的な方法や、活用できる障害年金制度まで、あなたの経済的な不安を解消するためのヒントをご紹介します。
この記事を読むと分かること
- 障害者雇用の給与相場は実際いくら?
- 障害者雇用の給与が低いといわれる理由とは?
- 収入を上げるには具体的にどうすればいい?
【結論】障害者雇用の給与相場は一般雇用より低い傾向にある
「障害者雇用の給与は安い」という話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、残念ながら厚生労働省の調査データを見ると、その傾向は事実であると言えます。
障害のない方の一般雇用と比べると、平均給与は低い水準にあります。
しかし、これはあくまで全体の平均値です。まずは、公的なデータをもとに具体的な給与相場を見ていきましょう。
【障がいの種類別】厚生労働省の調査データで見る平均給与額
厚生労働省が公表している「令和5年度(2023年度)障害者雇用実態調査」によると、障害者雇用で働く人の平均月収は以下の通りです。
- 身体障がい者:23万5,000円
- 知的障がい者:13万7,000円
- 精神障がい者:14万9,000円
- 発達障がい者:13万3,000円
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001233719.pdf
障害種別によって給与水準に差があることがわかります。特に、身体障がい者の平均給与が他の障害種別より高い傾向にあります。
一般の平均給与との比較
障害者雇用の給与水準をより明確に理解するために、障害のない一般労働者の平均給与と比較してみましょう。国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は458万円でした。月収に換算すると約38万2,000円となります。
出典:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2022.htm
障害者雇用全体の平均月収(約14万円~15万円程度と推計)と比較すると、20万円以上の差があるのが現状です。
この大きな差が、「障害者雇用の給与は安い」と言われる主な理由です。ただし、この背景には、障害者雇用では短時間勤務や非正規雇用の割合が高いといった事情も関係しています。
なぜ障害者雇用の給与は安くなるの?その理由を解説
障害者雇用の給与が一般雇用と比較して低い傾向にあるのには、いくつかの理由が存在します。
ここでは、その主な理由を2つの側面から詳しく解説します。
業務内容が限定的になりやすい
障害者雇用の給与が低くなりやすい理由の一つは、任される業務内容が限定されやすい点にあります。企業は障害者雇用促進法に基づき、障害のある方が無理なく安定して働けるよう、それぞれの特性や能力に合わせて業務内容や労働環境を調整する必要があります。
そのため、心身への負担が少ない業務や、マニュアル化された補助的な仕事が中心になるケースが多くなります。たとえば、データ入力や書類のファイリング、清掃、軽作業などが代表的です。
これらの業務は、高度な専門性や複雑な判断を求められる場面が少ないため、給与水準も比較的低めに設定される傾向があります。
つまり、本人の能力とは別に、合理的配慮の結果として業務範囲が狭まり、給与が上がりにくい構造になっているのです。
短時間勤務など非正規雇用の割合が高い
二つ目の大きな理由として、短時間勤務をはじめとする非正規雇用の割合が高いことが挙げられます。
障害の特性や通院の必要性、体調管理の観点から、フルタイム(週40時間)ではなく、週20時間〜30時間程度の短時間勤務を希望する当事者は少なくありません。
厚生労働省の調査データを見ても、障害者雇用における週の所定労働時間は、一般の労働者よりも短い傾向にあります。労働時間が短ければ、その分月収の総額は低くなります。
また、雇用形態もパート・アルバイトといった非正規雇用が多く、正社員に比べて昇給の機会が少なかったり、賞与(ボーナス)が支給されなかったりするケースが一般的です。こうした労働時間と雇用形態の違いが、平均給与の差に直接的に影響しています。
障害者雇用のリアルな手取り額をシミュレーション
障害者雇用の給与について考えるとき、額面給与だけでなく実際に手元に残る「手取り額」を把握することが重要です。手取り額とは、総支給額から社会保険料や税金が差し引かれた金額のことです。
ここでは、月収別に手取り額がいくらになるのかをシミュレーションします。
なお、以下の計算は、下記の条件を想定したあくまで目安です。お住まいの地域や加入している健康保険組合、年齢、扶養家族の有無などによって金額は変動します。
- 勤務地:東京都
- 年齢:35歳(40歳未満のため介護保険料なし)
- 条件:独身、扶養家族なし
- その他:障害者手帳を所持しており、所得税・住民税の障害者控除が適用される
平均月収15万円の場合の手取り額
障害者雇用の週30時間以上勤務における平均月収に近い、額面15万円の場合の手取り額を見ていきましょう。
【控除額の目安】
- 健康保険料:約7,400円
- 厚生年金保険料:約13,700円
- 雇用保険料:約900円
- 所得税:約800円
- 住民税:約2,000円
額面給与150,000円から控除額合計(約24,800円)を差し引くと、手取り額は約12万5,200円となります。年収に換算すると、額面は180万円、手取りは約150万円が目安です。
平均月収20万円の場合の手取り額
次に、額面月収が20万円の場合のシミュレーションです。一般雇用の非正規社員の平均にも近い金額となります。
【控除額の目安】
- 健康保険料:約9,800円
- 厚生年金保険料:約18,300円
- 雇用保険料:約1,200円
- 所得税:約2,000円
- 住民税:約4,800円
額面給与200,000円から控除額合計(約36,100円)を差し引いた場合、手取り額は約16万3,900円が目安です。年収では額面240万円、手取りは約196万円となります。
平均月収25万円の場合の手取り額
最後に、月収25万円の場合の手取り額を計算します。専門職や正社員として働くことで目指せる給与水準です。
【控除額の目安】
- 健康保険料:約12,300円
- 厚生年金保険料:約22,900円
- 雇用保険料:約1,500円
- 所得税:約3,500円
- 住民税:約7,900円
額面給与250,000円から控除額合計(約48,100円)を差し引くと、手取り額は約20万1,900円となります。この場合の年収は額面300万円、手取りは約242万円が目安です。
障害者雇用で給与を上げるための具体的な5つの方法!
障害者雇用の給与は一般雇用と比較して低い傾向にありますが、収入アップを諦める必要は全くありません。自身の強みを活かし、戦略的にキャリアを築くことで、給与を上げることは十分に可能です。
ここでは、今日から実践できる具体的な5つの方法をご紹介します。
資格取得やスキルアップで専門性を高める
給与を上げるために有効な方法の一つが、専門性を高めることです。企業は、専門的な知識やスキルを持つ人材を高く評価し、資格手当などの形で給与に反映することがあります。
そのため、自身の障害特性や興味・関心、目指す職種に合わせて、市場価値の高い資格取得やスキルアップに取り組むことが重要です。
たとえば、事務職であれば日商簿記やMOS、IT業界を目指す場合はITパスポートや基本情報技術者、さらにWebデザインなどのスキルが挙げられます。
こうした専門性を身につけることで任される業務の幅が広がり、昇給やより条件の良い職場への転職にもつながります。
正社員登用や一般雇用への転換を目指す
障害者雇用では、契約社員やパート・アルバイトといった非正規雇用の割合が高い傾向にあります。正社員になることで、月給のベースアップだけでなく、賞与(ボーナス)や昇給の機会、退職金制度など、生涯年収を大きく左右する待遇改善が期待できます。
まずは現在の職場で正社員登用制度があるかを確認し、上司や人事部にキャリアアップの意欲を伝えてみましょう。
もし制度がない場合や、より高い給与水準を目指すのであれば、一般雇用枠での転職を視野に入れるのも一つの選択肢です。その際は、必要な合理的配慮について整理し、企業側としっかり相談することが重要になります。
給与水準の高い業界や職種を選ぶ
給与は、個人のスキルだけでなく、業界や職種によっても大きく変動します。
一般的に、IT・情報通信業や金融・保険業、専門・技術サービス業などは、他の業界に比べて給与水準が高い傾向にあります。これらの業界では障害者雇用も積極的に行われており、専門職として活躍できるチャンスが豊富です。
職種で言えば、プログラマーやWebデザイナー、データ分析、あるいは経理・法務といった専門事務などが高収入を狙いやすいでしょう。未経験からでも挑戦可能な職種もありますので、将来性や自身の適性を見極めながら、キャリアチェンジを検討する価値は十分にあります。
就労移行支援事業所を活用してスキルを習得する
「スキルアップしたいけれど、何から始めればいいかわからない」「未経験の職種に挑戦したい」という方には、就労移行支援事業所の活用がおすすめです。
就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目指す障害のある方が、職業訓練や就職活動のサポートを受けられる福祉サービスです。
PCスキルやプログラミング、デザイン、ビジネスマナーといった専門的なスキルを無料で学べるほか、自己分析や企業研究、面接練習など、就職に必要なノウハウを総合的に支援してくれます。自分に合ったスキルを身につけ、自信を持って高待遇の求人に応募するための強力な土台となるでしょう。
障害者雇用に特化した転職エージェントに相談する
より良い条件の職場を効率的に探したいなら、障害者雇用に特化した転職エージェントへの相談が近道です。障害への理解が深い専門のキャリアアドバイザーが、あなたのスキルや経験、希望に合った求人を無料で紹介してくれます。
転職エージェントは、一般には公開されていない非公開求人を多数保有しているほか、企業風土や配属先の雰囲気といった内部情報にも精通しています。
さらに、あなたの代わりに企業と給与交渉を行ってくれるため、個人で応募するよりも高い年収での転職が実現しやすくなるという大きなメリットがあります。
おすすめの障害者雇用支援「ファーマーズマーケット」の魅力
障害者雇用に特化した支援サービスの中でも、近年注目されているのが「ファーマーズマーケット」です。農業を活用し、従来のオフィス業務とは異なる自由な環境での働き方を実現できる点が特徴です。
大きな魅力の一つは、障害のある方が無理なく働ける環境が整っていることです。個々の特性に合わせて業務が調整されているため、安定して働き続けやすい仕組みが整っています。
さらに、農作業を通じて生産から販売まで関わることができる点も特徴です。自分が関わった成果が目に見える形になるため、やりがいや達成感を得やすく、働くモチベーションの向上にもつながります。
専門知識やスキルがなくても未経験から始められる仕組みが整っています。気になる方はぜひこちらをご覧ください。
給与と合わせて知っておきたい!障害年金などの経済的支援のきほん
障害者雇用で働く上で、給与は生活の基盤となる重要な要素です。しかし、それだけで生活を支えるのが難しい場合もあるでしょう。
ここでは、給与に加えて活用できる公的な経済支援制度について解説します。これらの制度を正しく理解し活用することで、より安定した生活設計が可能になります。
給与と障害年金は同時に受け取れる
「会社で働き始めたら、障害年金はもらえなくなるのでは?」と心配される方が多くいますが、原則として、給与収入を得ながら障害年金を受給することは可能です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、これらは病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる公的な年金です。障害厚生年金や、20歳以降に初診日がある障害基礎年金には所得制限がないため、給与額にかかわらず受け取ることができます。
ただし、注意点として、20歳前に初診日がある障害基礎年金については所得による支給制限が設けられています。一定の所得額を超えると、年金額が2分の1停止または全額停止となる場合がありますので、該当する方はお住まいの自治体の窓口や年金事務所で確認することをおすすめします。
障害者手帳で受けられる税金の優遇措置
障害者手帳をお持ちの方は、税金の負担を軽減できる「障害者控除」という制度を利用できます。これは、納税者自身または扶養親族が障がい者に該当する場合に、所得から一定額を差し引くことができる仕組みです。障害者控除は、毎月の給与から天引きされる所得税や、翌年支払う住民税の金額に影響します。
控除額は障害の程度によって異なり、主に「障がい者」と「特別障がい者」の区分があります。
- 所得税の控除額
- 障がい者:27万円
- 特別障がい者:40万円
- 住民税の控除額
- 障がい者:26万円
- 特別障がい者:30万円
この控除を受けるためには、会社の年末調整の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で申告するか、ご自身で確定申告を行う必要があります。
これにより課税対象となる所得が減るため、結果として手取り額が増えることにつながります。忘れずに手続きを行いましょう。
まとめ
本記事では、障害者雇用の給与相場について解説しました。厚生労働省のデータが示す通り、障害者雇用の給与は一般雇用より低い傾向にあります。その主な理由は、業務内容の限定や短時間勤務など非正規雇用の割合が高いことです。
しかし、資格取得やスキルアップ、給与水準の高い業界への転職、正社員登用を目指すことで給与アップは可能です。また、給与と障害年金を併給したり、税金の優遇措置を活用したりすることもできます。
自身の状況を正しく理解し、就労移行支援や転職エージェントなどの専門家の力も借りながら、納得のいく働き方を見つけましょう。



