麻の歴史

麻の歴史 日本は八百万神(やおよろずのかみ)の多神教で殆ど全て自然物に神さまがいると考える古神道の考え方があり、太古の昔から鈴縄、注連縄、結界を結ぶ麻紐、神主が持っている御幣(ヌサ)、神社等の垂れ幕として使われ、精麻(セイマ)、神宮大麻と呼ばれる神符・神札、お祓いの時の御幣、また仏教に於けるお盆での「迎え火」で麻幹(オガラ)が使われ、現在でもお盆の時期になると花屋や道の駅、スーパー等で麻幹が入った「お盆セット」が販売され、その他にも麻は蚊帳、寝具、畳糸等として人々の生活に溶け込み多岐に渡り活用されて来ました。
また、弓弦、静岡県浜松市の「凧合戦」、新潟県の「白根大凧合戦」、愛知県の「けんか凧」等の凧糸、横綱の化粧回し(大相撲の化粧まわしの綱)、結納品(結納品の友白髪)、麻紙(日本画の用紙及び麻紙)、書道に於ける油煙墨(桐油、菜種油、麻油等を焼いて出来た煤から製造される墨)、麻織物(越後上布、近江上布、能登上布等の麻織物は以前、大麻草の手績みの糸を使用していましたが、現在では麻の入手が困難な為に中国産の紡績糸や苧麻を使用しています。)現在、日本において大麻繊維を使用しているのは、奈良県奈良市月ヶ瀬の「奈良晒し」と岩手県雫石の「亀甲織」の2ヶ所のみになってしまいました。


白麻麻には黒麻、黄麻、白麻の3種があり、安価なマニラ麻の流入はありましたが、輸入されるものは黒麻と黄麻のみで、白麻は国産だけです。
黒麻や黄麻はいわゆる一般消費財として利用されるそうですが、現在、国内生産者の激減から白麻の供給が間に合わず、結果として、例えば、神社の鈴縄(すずなわ)の70%はナイロン製となってしまいました。
また、その他にも白麻を使用しなければならない、相撲の化粧回し、注連縄(しめなわ)、結納品の友白髪、弓弦、凧糸、畳糸、麻紙等の価格は非常に高騰しております。以上は日本国産の白麻の代表的な利用例で、輸入品の黒麻、黄麻では対応できないものですが、一方、近代的な利用法として、日本銀行券(紙幣)は耐久性、保存性に優れ比較的低コストなマニラ麻を原料としております。
また、その他にも麻の実ビール、アロマオイル、食用油、食品として七味唐辛子・麻の実ナッツ・麻の実・ヘンプオイル等に活用されています。


現在、日本では、麻の栽培そのものが規制されている為に、その活用法は限定的ですが、世界各国では、麻を新たな資源として活用し、空気清浄機のエアフィルター、電気掃除機の集塵バッグ、麻とコットンの混紡繊維製品で作られたオーガニック衣料品、ヘンプアクセサリー、食品としての麻の実ナッツ・麻の実・ヘンプオイル・麻ミルク、化粧用オイル、食用オイル、アロマテラピー用オイル、木肌を生かすためのフィニッシュオイル、ヘンプクロス(壁紙)、建材、壁材等の生活物資が使用されており、メルセデスベンツ、BMW、アウディー等の自動車メーカーでは、車体内装用として麻から作ったバイオマスプラスチックを広く使用しています。
また、更に、1980年にフランスで開発された住宅建材、カノスモーズやドイツで開発されたテルモハンフは、麻チップ、水、石灰から作られた弾力性と断熱性の高い建築材料であり、コンクリートと同様に型枠に流し込むと言う非常に優れた加工性を持つ建材で広い汎用性を有しています。


麻3ヶ月で3メートルほど成長する麻を利用すると成長に十数年を要する住宅用木材伐採は不要となる可能性があます。
環境問題の解決の手段として大きく注目した中華人民共和国では、先進国と同様に紙製品の使用が増大する事を見据えて、成木になるまでに50~60年かかる樹木のパルプではなく、3ヶ月程で採取できる大麻草を原材料に使う製紙用パルプ生産、汎用製品の開発を行う方向で2020年までに国内大麻草の作付け栽培地面積を20億坪まで拡大し、邦貨で資本金2500億円、総収入2700億円、純利益へ270億円、従事者6万人にも上る新たな産業を計画しています。

日本における麻栽培を妨げる要因

何故、日本では麻栽培とその産業化が進まないのか・・・・・。


大麻取締法は敗戦時に戦勝国である米国から導入され、日本に於ける麻文化は消滅への道を辿っております。この米国により制定された「大麻取締法」は1920年代に誕生した石油化学工業が成長期に入り石油化学工業分野での大手であるデュポン社が多くの特許を取得し始めた頃に制定されました。この頃、綿花、パルプ、麻等は紙、繊維、医療用品として利用され、また同時に研究も進み、特に麻は建材、燃料、植物性プラスティク等にも利用範囲が拡大し、特に植物性プラスティクは自動車のボディー(1949年、米国 フォード社)にまで利用範囲が広がりました。
その影響か、日本に於いては、以下の方程式が殆ど全ての国民の脳に刷り込まれております。


大麻=覚醒剤=人格破壊=犯罪


麻農家 この様に日本の文化と深く係わって来た麻ですが、「大麻取締法」の発令と東南アジアから安価なマニラ麻が日本市場へ流入した事により、1950年には、4,049ha(ヘクタール)の作付面で、25,118人いた栽培者も、1996年度には、作付面積が12.4haに激減し、栽培者数も102人となり、2005年には全国の大麻栽培免許者数は64名、栽培面積は859.568a(アール)となっており、現在では、全国 の麻専業農家は10軒に満たない状況となっております。
日本の大麻取締法では、第一条 「大麻の定義」に「この法律で大麻とは、大麻草及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品 ならびに大麻草の種子及びその製品を除く。」と規定されています。つまり、この法律で規制されているのは、覚醒効果の有無に関わらず全ての花穂と葉であり、これを法律では、「大麻」と呼んでいます。
しかし、イギリス、オランダ、オーストリア、ニュージーランド、イタリア、フランス、ドイツ、ハンガリー、フィンランド、スウェーデン、ルーマニア、カナダ、インド、中国、韓国等々では麻栽培が解禁されています。これらの諸外国では日本の様に植物部位での規制ではなく、向精神作用をもたらすTHCの含有量で規制しており、ヨーロッパでは.0.2%未満、カナダでは0.3%未満をIndustrial Hemp(産業用麻)として行政当局へ届け出るだけで栽培が可能です。しかし、日本ではTHCの含有量等での規制ではなく、大麻そのものの存在を許容しないと言う姿勢であります。